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アガリクスで劇症肝炎??

2004.08.07(土)

神戸新聞(2004/4/11)
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou04/0411ke24050.html

 

《コメント》

 (以下引用)
「神戸市内の六十代男性が、書籍などで「がんが消える」とうたわれ、人気を集める健康食品アガリクスを飲み始めてから三週間後に劇症肝炎を発症、その後死亡していたことが十日、分かった。病院側は「アガリクスが原因と疑われる」と指摘しているが、報告を受けた厚生労働省は「因果関係がはっきりしない」などと情報の公表を見送った。 」 (以下省略)

 

というのが記事の内容。結局この患者が「複数の健康食品を服用していた」ということと、使用したアレルギー検査の特異性が低いことを理由に、「因果関係がはっきりしない」ということになり、公表を見送ったらしい。「疑わしきは罰せず」という、医薬品なら考えられない寛大な措置ではある。輸入ダイエット用サプリなどでは頻繁に、死亡事故を含む重篤な副作用が発生しており、「健康食品」だから、「サプリメント」だから、と言って、盲目的に「安全である」と信じることは、ときとして危険である。「薬効を期待する」ということは、「生体に対して何らかの薬理作用を及ぼす」ということであるから、「効果がある」と「副作用がある」ということは表裏一体で、それは「健康食品」だろうが「医薬品」だろうが、基本的には同じことである。ただ、「医薬品」の方は「医薬品」としての認可を取るために有効性と副作用のデータが必要であるのに対して、「健康食品」は法的には「食品」とみなされる為、有効性のデータも副作用の報告義務も無い、ということから、見かけ上「健康食品」には副作用がない、というように見えてしまうのだろう。

ところで、「アガリクス」には「薬効」があるのか、という疑問が当然沸いてくるのではないだろうか?ちなみに、厚生労働省の関連機関である「独立行政法人 国立健康・栄養研究所」では、各種「健康食品」に関する情報を公開してるが、アガリクスに関する情報はここで見ることができる(開いたページの「同意する」をクリックすると情報を見ることができる)。ここで判るように、アガリクスには「有効性」も「安全性」も、今のところ信頼できるデータはひとつもない、ということのようである。かろうじてマウスによる基礎実験の報告があるが、マウスとヒトでの効果を同じに論ずることは危険である。

結局今回の記事にある「劇症肝炎」がアガリクスによるものかどうかは不明である。ヒトに対して殆ど「薬効」がないということなら、副作用もそれ程重篤なものは無いようにも思えるが、はっきりしたことは判らない。アレルギーはどんな食物でも起こり得るから、そういった意味での危険性は十分に考えられる。しかし、「有効性」のはっきりしないものを、わざわざアレルギーのリスクを冒して服用する意味とは、一体何なのだろうか?

犬や猫では今のところこのような副作用の報告はないが、「安全」と「リスク」に関して、これからもう少し真剣に考えてゆく必要があるだろう。