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「動物用シャンプー」への疑問

2004.09.13(月)

今回は以前から疑問に思っている「動物用シャンプー」に関する疑問を述べたいと思います。動物用シャンプーと言っても、シャンプーをする動物は主に犬なので、「犬用シャンプー」と言い換えても良いでしょう。
犬の皮膚のpHはヒトのそれとは異なり、弱アルカリ性だと言われています。本当にそうなのか?という疑問もあるのですが(犬の皮膚表面のpHを調べた文献はそれ程多くは無いため、根拠にはいまひとつ乏しい気がする)、そこから疑いだすと話が先に進まないので、とりあえずここまでは信用するとしましょう。
人のボディソープやハンドソープなどの業界では、暫く前から「弱酸性」ブームであることは周知の事だと思います。「人の肌は弱酸性、だから洗剤も弱酸性がお肌に優しい」と言われて、誰もが疑うことなく「その通りだ」と信じてしまっているようです。このような人たちに、「人の肌は弱酸性、同じpHの洗剤で洗うと肌に良くないので、弱アルカリ性がお肌に優しい」と言ってみたらどのような反応をするでしょうか?やっぱり「その通りだ」と信じてしまうのではないでしょうか?要するに、「それらしい宣伝文句」を使われれると何となくその気になってしまうものなのです。
これに関しては、以下のサイトが参考になります。
http://www.live-science.com/honkan/qanda/body10.html

つまり、「酸性」だろうが「アルカリ性」だろうが、洗剤はもともと肌に良くないので、必要最小限の汚れを落としたらきれいさっぱり洗い流した方がよい、というのが基本的な考え方です。汗や皮脂は酸性なので、弱アルカリの「石鹸」などで洗浄した場合、石鹸の界面活性効果は中和されて失活してしまうため、皮脂や角質を必要以上に取り去る事が無く、結果として皮膚に優しい、という事のようです。ところがこれを「弱酸性」のボディソープで洗うとどうなるかと言うと、同じ酸性どうしのため中和されないので、洗剤の界面活性効果は皮膚の表面で長時間作用してしまい、本来必要な皮脂や角質まで取り去ってしまう危険性がある、という訳です。この考えは、確かに一理ある、と思います。
で、これは犬でも全く同じように考えられる訳で、弱アルカリ性の皮膚を弱アルカリ性の洗剤で洗った場合、洗剤の界面活性効果はいつまでの残るため、皮脂や角質を必要以上に取り除いてしまう危険性がある、と考える事も出来ます。
しかしながら、動物用シャンプーのメーカーは何れも、「犬の肌は弱アルカリ性なので、シャンプーも弱アルカリ性が良い」と、当然の如く宣伝しているのが現状です。しかしなぜ「その方が良い」のか、誰も教えてくれません。とにかく「同じ方が良いに決まっている」ことになっているようです。
昔から、「ヒト用のシャンプーを犬に使用してはいけない」と言われ続けてきました。確かに、弱アルカリ性の石鹸を犬の皮膚に使用するのは、あまり良いことではないのかも知れません。しかし、弱酸性のボディソープ全盛の現在では、むしろヒト用の弱酸性洗剤を犬に使用する方が安全なのかもしれない?などと考えたりもしています。

 

どなたか、私の長年の疑問を解消してくださる奇特な方はいらっしゃらないでしょうか?

 

注意1 アレルギーや脂漏症など、特定の皮膚疾患を持っている動物ではそれぞれに応じた薬用シャンプーを使用すべきです。ヒト用のシャンプーは決して使用しないでください。

注意2 上記内容は、あくまで私個人が普段の診療で感じている疑問を紹介したに過ぎません。決して「犬にヒト用のシャンプーを使用する」ことを推奨している訳ではありませんので、これを実施して問題が起きたとしても私が責任を負うことは出来ませんのでご了承ください。