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「ドレッシング材」ってナニ?

2017.10.31(火)

「ドレッシング材」という言葉は、一般の方にとってはあまり聞きなれない言葉ではないでしょうか?「ドレッシング」と言っても、サラダにかけて食べるものではありません。傷を保護するために巻いたり覆ったりするものを総じて「ドレッシング材」と呼びます。従って、広い意味では昔から使われている「ガーゼ」や「包帯」もドレッシング材の仲間に入ることになります。しかし現在では、ガーゼや包帯の他にも様々なドレッシング材が開発されています。
ドレッシング材には色々な分類のしかたがあります。昔から使われているガーゼや包帯などに対して、新しく開発されたものを「近代ドレッシング」などと呼ぶ場合もあります。「傷を乾いたガーゼで治療するとどうなるか」のところでも説明しましたが、ガーゼや包帯には湿潤環境を保つ働きが無く、傷が乾燥してしまい治癒が遅れてしまいます。新たに開発されたドレッシング材の中には、創傷面の湿潤環境を保つために創面を密閉するものもあり、その性質から「閉鎖性ドレッシング」と呼ばれたりしています(全ての近代ドレッシングが「閉鎖性」と言う訳ではありません)。
ここでは、創傷面の湿潤環境を保ち、苦痛をを与えず傷を早く治すのに非常に役に立つ「近代ドレッシング」の一部を紹介します。

 

1)フィルムドレッシング

ポリウレタンで作られた、薄い透明なフィルム状のドレッシング材。粘着部分のシールを剥がして皮膚に貼り付けて、傷を密閉する。手術後の縫合創や、アルギン酸、ハイドロジェル(下記参照)を覆うための「二次ドレッシング材」として使用する。写真は腹部の縫合創を被覆するために使用したもの。こうするとカサブタができずに、きれいな縫合創となる。

 

2)ハイドロコロイド・ドレッシング

「カラヤガム」という親水性のコロイドと、薄いポリウレタンフィルムの2層からなっているドレッシング材。親水性コロイドの面に粘着性があり、こちら側が傷と接するようにして使用する。コロイドは浸出液を吸って「ドロドロ」のゲル状に溶けて、創傷面の湿潤環境を維持する。深い傷や浸出液の多い傷ではこの「ドロドロ」が直ぐに漏れ出てきてしまうため、このような傷の治療には向いていない。薄手のもの(写真左)と比較的厚めのもの(写真右)がある。
最近Johnson&Johnsonから発売されている「キズパワーパッド」という製品はこのハイドロコロイド・ドレッシング材である。

 

3)ポリウレタンフォーム・ドレッシング

細かい気泡を含んだスポンジ状のポリウレタンで出来たドレッシング材で、表面はやはり薄いフィルムでコーティングされている。厚みがあり吸水性に優れているため、比較的浸出液の多い傷を覆うのに使用できる。これ自体には粘着性が無いので、粘着包帯などを利用して固定する必要がある。細く切ってドレインとしても使用できる。
写真は半分に切って裏面と表面を同時に見えるようにしたところ。下側の白い方を傷面に当てて使用する。

 

4)ハイドロジェル・ドレッシング

無色透明のジェル状のドレッシング材。一見「塗り薬」や軟膏剤のように見えるが、これもれっきとしたドレッシング材である。乾燥気味の傷や壊死組織の残った傷に使用する。親水性のジェルの中に浸出液を保持して、浸出液に含まれる自己融解酵素を活かしながら壊死組織を少しずつ溶かすような場合に有効である。単独では使用できないので、フィルムドレッシングやポリウレタンフォーム・ドレッシングなどと合わせて使用する。

 

5)アルギン酸ドレッシング

昆布の抽出液から作られた綿状のドレッシング材。浸出液を吸収してジェル状に溶ける。もともとはその吸水性を活かして浸出液の多い創傷に使用される目的で作られたが、現在ではもっと吸水性の優れたドレッシング材が入手できるため、あまりこの目的での利用価値は無い。しかし、止血作用に非常に優れているため、出血を伴う新鮮外傷に対する初期治療に使用するドレッシング材として非常に有用である。単独で使用すると乾燥して固まり、「カサブタ」のように傷にくっついてしまうので、必ずフィルムやハイドロコロイドなどのドレッシング材と合わせて使用する。

 

6)ハイドロポリマー・ドレッシング

親水性のポリマーとそれを覆う粘着性のカバー素材の2層からなっている。ハイドロポリマーは吸水性に優れており、比較的大量の浸出液を伴う傷に使用できる。浸出液を吸収すると、ポリマーは傷の形に合わせて膨張し、創傷面にフィットする。従って、このドレッシング材は浸出液が多く、深い傷に使用するのが便利である。写真はハイドロポリマー部分に水道水を含ませて膨張させた様子。

 

7)食品包装用ラップ

サランラップ、クレラップなどの食品用のラップである。当然ながらこれらの製品は「医療用」ではない。しかしながら、ラップは非常に優れたドレッシング材として傷の治療には重宝している。基本的にはフィルムドレッシングと同じような使用法をすることが多いが、粘着性が無いために「完全な密閉状態」にはならない。つまり「半閉鎖」状態となるので、浸出液の多い傷にも使用できる(もちろんラップの上から吸水性のパッドなどを当てる必要がある)。ハイドロジェルなどと合わせて使うのにも便利である。また非常に薄いために創傷面を圧迫することが無く、褥創(床ずれ)の治療にも有効である。