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2018.05.21(月)

フィラリア予防の季節がやって来ました。まだ検査を受けられていない🐶さんは夏になる前に検査を受けて、予防を開始するようにして下さい。

フィラリア予防の注射は予約制となっております。注射をご希望の方は事前の予約をお願い致します。

2017.11.02(木)

動物医療の発達や食餌・生活環境の変化、予防医学の発達により、犬や猫などの飼育動物の寿命は、この数年で飛躍的に長くなりました。それに伴って、加齢による老齢疾患の割合も増えてきました。同じ「長生き」をするならば、少しでも長く健康で楽しく暮らして行きたい、と願うのは、人も動物も同じことでしょう。ここでは、「高齢化」を迎える(あるいは既に迎えている)動物達のために、是非知っておいて頂きたいことを紹介します。

 

▽「何歳からが『高齢』なのか?」

「高齢、高齢」と言いますが、一体何歳から「高齢=シニア」と呼べばよいのか?と言う疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?よく、動物の年齢を人間の年齢に比較した「年齢対応表」と言うようなものを目にします。また、動物の年齢を人間の年齢に当てはめるための「式」と言うのもあるようです(例えば、《「動物の年齢」×4+16》など)。これらは「目安」としては非常に便利で解り易いのですが、私自身はあまりこう言った表や式を好んで使用しません。犬と猫では寿命が違いますし、同じ犬でも品種によりかなり寿命が違います。超大型犬と小型犬でもかなり違います。従って、特に「何歳から」と言う決まりはないのが現状ですが、だいたい7歳くらいから「シニア」、10歳を過ぎたら「老齢(=お爺さん・お婆さん)」と考えて、ほぼ差し支えないだろうと思われます。

 

▽「食餌内容の変化」

歳をとると、運動量も減りますし基礎代謝も低下します。したがって、同じ体重の若い個体に比較して、必要なカロリーが少なくて済むようになります。また、消化・吸収機能が低下してきますので、消化の良い食餌を与える必要があります。一般的に「シニア」との表示があるフードは、このようなことに気を付けてカロリーや蛋白質、脂肪などの含有量が低く抑えられています。もちろん、腎不全や心不全、糖尿病、アレルギーなど、何か特定の疾患を持っている場合には、それに適した療法食を与えることが大切です。関節炎予防のための成分が含まれた療法食もありますし、認知症の予防として、不飽和脂肪酸などが添加された犬用の療法食もありますので、必要に応じてこのような食餌を与えるようにしても良いでしょう。

 

▽「高齢になると発生し易い病気」

「高齢疾患」として最近非常に問題となっている病気のひとつは、腫瘍です。悪性の腫瘍は「癌」と呼ばれます。雌犬に発生の多い「乳腺腫瘍」は、若いときに不妊手術を受けておくことで、ある程度その発生を予防することが可能ですが、多くの腫瘍(癌)は遺伝的な要素が大きいため、発生を予防することは困難です。しかし、早期に発見することで治療が可能な場合も少なくありませんので、定期的に健康診断を受けたり、気になることがあればすぐに病院で診察を受けることが大切です。
その他、加齢に伴って発生の頻度が多くなる病気としては、心臓病や慢性腎不全、糖尿病や甲状腺などの内分泌疾患、白内障、関節疾患、歯石・歯肉炎などによる歯周病、などが挙げられます。不妊手術を受けていない雌(主に犬)の場合は「子宮蓄膿症」、雄犬の場合は前立腺疾患や会陰ヘルニア、肛門周囲腺の腫瘍などの発生率が非常に高くなります。

 

▽「本当に『歳』のせい?」

先に挙げたような「老齢疾患」の多くは、早期に診断し、適切に治療すれば、きちんと治る(あるいは進行を防ぐ)ことが可能なものが少なくありません。「近頃元気が無いけど、歳だから仕方が無い…」と思っているものが、実は「病気の症状」で、治療により改善することも決して珍しくありません。良くある「思い違い」には、次のようなものがあります。

 

・気力が無い、反応が鈍い…認知症、甲状腺機能低下症など(犬)
・怒りっぽい、痩せてきた…甲状腺機能亢進症(猫)
・疲れやすい、散歩に行きたがらない…心疾患、関節炎、爪の伸びすぎなど
・毛が薄くなってきた…甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など
・水を大量に飲み、尿も多い…子宮蓄膿症、慢性腎不全、糖尿病、副腎疾患など
・お漏らしをする、トイレ以外の場所で排尿する…認知症、膀胱炎、膀胱結石など
・口臭がくさい…歯周病、腎不全、口腔内腫瘍など

 

▽「普段の生活で気を付けること」

高齢になると環境の変化によるストレスを受け易くなるため、規則正しい生活をすることが大切です。病気で入院する場合は仕方がありませんが、ペットホテルに預けるのは出来るだけ最小限にするべきでしょう。コミュニケーションを良く取ることは、行動や身体の僅かな変化を見つける上でも非常に重要ですし、認知症の予防にもなります。家族と接触の機会の少ない、屋外飼育の犬は認知症になり易い、とも言われています。
高齢の動物は自分で毛繕いをしなくなり、爪も自然に削れなくなるので、ブラッシングやシャンプーをして皮膚や毛を清潔に保ち、爪や口腔内、耳垢や目ヤニなどをきちんと処理してあげることが大切です。また室内で排泄が出来るようにしつけておくと、体力が無くなって散歩に行けなくなったときにとても有利です。
歩くのも覚束ないような高齢の動物は、例え「屋外飼育」をしていた場合でも、室内で管理するようにします。特に「寝たきり状態*」の場合は、玄関先でも構いませんから、必ず室内で管理するようにして下さい。
「高齢による問題」は「病気」ではないので、病院に行っても仕方が無い…と考えている飼い主の方も多いかもしれません。しかし、どんな些細なことでも、困ったことは必ず動物病院に相談することをお勧めします。

 

*屋外飼育の犬・猫が寝たきりになると、傷口や肛門などにハエが卵を産みつけて蛆虫が発生(ハエウジ症)することがあるので、絶対に室内で管理してください。また中型~大型犬では、褥創(床ずれ)が生じることがあります。「褥創」については「こちら」を参考にしてください。

2017.11.02(木)

■「認知障害症候群(認知症)」とは?

獣医学の発展や食餌・予防などの飼育状況の改善などにより、犬や猫などの飼育動物の寿命は一昔前に比較して格段に長くなっています。これに伴い、様々な成人病や腫瘍(癌)などの老齢性疾患の発生が増えて来ていますが、その中でも最近特に問題になっているのが、「認知障害症候群」です。認知障害症候群は、英語ではCognitive Dysfunction Syndromeと言い、一般的にCDSと略されます。
人間の認知症では、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症が最も一般的です。犬のCDSとヒトのアルツハイマー型認知症は全く「同じもの」ではありませんが、ヒトのアルツハイマーの場合と同様、脳にβ―アミロイド(Aβ)と言う蛋白質が蓄積して「老人斑」を形成する、と言う病理学的な共通点が見られます。この蛋白質は加齢に伴って、神経ニューロンの内部および周囲に沈着して神経線維の刺激伝達を障害し、脳の機能を低下させ、様々な症状を引き起こすことが判っています。脳のどの場所に、どのくらいの範囲でβ―アミロイドが蓄積しているかと言うことは、主にどんな症状が強く出るのかと言うことと深い関係があります。
CDSは犬や猫など様々な動物で見られますが、特に柴犬や日本犬系の雑種などで、その発生率が高いと言われています。「日本犬やその雑種はそれだけ長生きするから」と言うのも理由のひとつかもしれませんが、「認知症を示す日本犬では血液中の不飽和脂肪酸の濃度が著しく低い」という報告もあり、栄養面や飼育環境、遺伝的要素など様々な原因が「加齢」と複雑に絡み合って、CDSを引き起こしている可能性もあります。

 

■ CDSの症状

CDSの主な症状としては、以下のようなものを挙げることが出来ます。

・見当識障害(周囲の環境、人、場所に対する認識の低下)
・飼い主や他の動物(同居のペットなど)に対する反応の変化
・昼夜の逆転(昼間寝て夜は起きている)
・室内や不適切な場所での排泄
・行動の変化(ある行動の増加・低下、ずっと同じ行動を続ける、など)
・興奮や不安行動の増強
・刺激に対する反応の変化(増強あるいは減退)
・食べ物に対する興味の変化(増強あるいは減退)
・以前学習した行動が出来なくなる(特に使役犬で顕著)

 

これらの症状の中で、最も問題となることが多いのが、「昼夜の転倒」による「夜鳴き」ではないでしょうか。昼間はずっと寝てばかりいるのに、家族が寝静まる頃になると起きだして、徘徊したり大きな声で一晩中ほえ続けたりします。認知症状による夜鳴きは、非常に大きな声で、且つ単調にほぼ同じ間隔で鳴き続けるのが特徴です。家族の方々も睡眠不足にりますし、また「隣近所に迷惑を掛けてしまうのではないか」という不安で憔悴してしまい、相談を受けるケースもよくあります。
また、長年家族の一員として可愛がってきた動物が、飼い主である自分自身を認識できないのではないか?と感じたとき、多くの方は非常に強いショックを受けるものです。
これらの行動は、犬では顕著に見られますが、猫の場合は『寝ている時間が長くなる』とか『トイレの手前で排泄してしまう』というような、どちらかと言うと控えめな症状として現れることが多いようです。

 

■ CDSの診断方法

CDSは一般的に、犬では11歳以降に発症し、徐々に進行すると考えられています。治療せずに放置した場合、症状が明らかになってからの寿命は約1~2年だと言われています。現在のところ、血液検査やその他の臨床検査では、CDSを明確に診断する方法はありません。したがって、以下のような「チェック項目」を設け、飼い主の方に「当てはまる項目があるかどうか」を回答してもらう、と言うことでCDSを判断する方法が広く受け入れられています。

 

《チェック項目》

①夜中に意味も無く単調な声で鳴き出し、止めても鳴きやまない。
②歩行は前にのみとぼとぼと歩き、円を描くように歩く(旋回運動)
③狭いところに入りたがり、自分で後退できなくて鳴く
④飼い主も、自分の名前を呼ばれても判らなくなり、何事にも無反応
⑤よく寝て、よく食べて、下痢もせず、痩せてくる

 

高齢犬で、以上の5項目のうち1つでも当てはまるものがあれば、CDSの可能性があると判断されます。これらの症状はもちろん、CDS以外の脳神経疾患でも見られる可能性がありますから、年齢やその他の神経症状がないかどうかなどをよく吟味し、CDS以外の病気を除外する必要があります。

 

■ CDSの治療・対処方法

一昔前までは、「ある程度歳を取ったら認知症を発症するのは仕方が無いこと」と言う認識が一般的でした。これは一般の飼い主だけではなく、多くの獣医師もまた、以前はこのような認識を持っていました。しかしながら、人間の場合も全てのお年寄りが必ずしも「認知症」になる訳ではないのと同様に、動物の場合も全ての高齢犬で「認知症」が見られる訳ではないことから、CDSは必ずしも避けられない「運命」ではなく、現在ではある程度の予防や治療が可能な「病気」である、という捉え方をするのが一般的になってきました。
前述のように、「認知症を示す犬の血液中の脂肪酸の濃度が低い」という報告もあることから、CDSの予防および治療として、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸を給与することが、ある程度有効であると考えられています。また、「サウスアフリカン茶」というお茶の一種を与えることで、「夜鳴き」の症状が改善した、と言う報告もあるようです。脳の機能を低下させるような神経細胞の障害は、活性酸素などのフリーラジカルの作用を強く受けるため、抗酸化作用のある物質を投与することもCDSの予防につながると考えられます。動物用に、抗酸化物質を含んだ補助食品などもありますし、CDSの予防・症状改善用に成分を調合された処方食もありますので、高齢の動物にはこのような食品を与えるのも良いでしょう。
アメリカではヒトのパーキンソン病の治療薬と同じ薬剤が、犬のCDSの治療薬として認可されています。またヨーロッパなどでは、脳血管の循環を改善する薬や、抗血栓作用のある薬などが、犬のCDSの治療薬として認可されているようです。また、CDSそのものを改善するのではなく、「夜鳴き」や「昼夜逆転」などの特定の症状を「矯正」したい、という場合には鎮静剤や睡眠薬などを用いる場合もありますが、これらの薬剤は結果的にはCDSの進行を早める可能性があると思われます。
CDSの治療は「こうすれば必ず良くなる」というものではありません。軽度のCDSであれば、無理に薬を飲ませたり食事を処方食に限定するのは可哀そうだ、という考え方もあるでしょう。また幾つか見られる症状のうち、どの症状が一番「問題」とされるのかは、飼育状況によっても変わってきます。どのような治療を希望するのかを良く考え、掛かりつけの獣医さんと相談して治療方針を決めるのがよいでしょう。

 

■ CDSの動物とどう付き合ってゆくか

ある調査では、7歳以上の犬を飼っている150人の飼い主にアンケート調査をしたところ、48%の人が、上に挙げた「CDSの症状」のうち少なくとも1つ以上が見られる、と答えたそうです。しかしながら、これを「主訴」として動物病院を受診したのは、そのうちの17%だけだったということです。恐らく、「高齢だから仕方が無い」と考えて、病院に連れて行かないという方が殆どなのではないかと思われます。しかし、CDSは治療が可能な「病気」です。もちろん治療効果には個体差がありますし、18歳を越えるような非常に高齢な動物の場合にはあまり効果を期待することができないかもしれません。しかし早期から治療を開始すれば、CDSの進行を遅らせることが可能な場合もありますし、夜鳴きや徘徊などの「困った」行動に悩まされる機会が減る可能性も充分にあると思われます。
「高齢の日本犬にCDSが多い」と報告されているように、品種によってもその発生率は違いますが、飼育状況や生活環境も大きく影響していると考えられます。室内飼育の犬よりも外飼いの犬のほうがCDSの発生が多いという報告もあります。外飼いの犬のほうが人間とのコミュニケーションの機会が少なく、脳に対する刺激が少ないためとも言われています。「散歩をして餌を与えたら放ったらかし」と言うような刺激の無い生活は、CDSを進行させる可能性があります。
普段からなるべくよく話しかけ、コミュニケーションを取るように心掛けることが大切です。「待て」や「座れ」などのしつけや訓練を維持すること、うまく出来たときは褒めて、メンタルな面でも刺激を与えることなどが、CDSの進行を防ぐ上でとても大切です。それでもCDSの症状が出てきてしまったときは…そのときはあまり無理なことはせず、安らかに余生を過ごさせてあげるようにすべきでしょう。

2017.11.02(木)

◆「褥創」の管理方法

①基礎疾患の治療と栄養管理

糖尿病や腎不全などの基礎疾患がある場合には可能な限りこれらの治療を並行して行います。栄養状態の悪化は褥創の悪化、治癒遅延に直結します。バランスのとれた消化の良い食餌を与え、適切な栄養管理をすることが大切です。

 

②圧迫を和らげる(除圧)

ヒトの場合にはウォーターベッドや体圧切替用エアマットレスなどの介護用高機能ベッドを利用することが出来ますが、動物ではこのような設備を利用することは非現実的です。

 

 

*介護用マット(お勧め)

①ドッグケアマット(ケアプロダクツ:http://www.care-products.jp
②ホームナース(田村駒株式会社:http://petsuki.com/homenurse/
③ペット専用介護マット(ユニ・チャーム ペットPro:http://pet.unicharm.co.jp/pro/

 

最近は動物用に「低反発マット」が売られているので、これを利用すると非常に便利です。低反発マットは充分に厚みのあるものを選びます。「すべり難い」ようになっているマットは、「摩擦がある」と言う事ですから、褥創対策にはあまり向いていない可能性があります。「すべり難い」タイプのマットを使用する場合には、滑りの良いシートを敷いて摩擦を軽減させてやると良いでしょう。

 

摩擦はまた別の問題を引き起こします。動物の皮膚はヒトに比べて薄く非常に伸びやすいため、体の下側になった方の皮膚が敷物との摩擦によって引っ張られたり捻れたりし易くなっています。この状態の皮膚に、更に上からの圧力が加わると、極めて容易に血行障害を起こします。ですから動物を横に寝かせた後には必ず体の下に手を入れて、捩れた皮膚を元の自然な状態に戻すように心掛けることが重要です。

 

寝たきりのヒトに於いて、褥創の出来やすい部位のひとつに「かかと」があります。「ヒトのかかと」の褥創を例にとって、正しい除圧と間違った除圧について少々説明してみます。
傷を保護する目的で、厚みのある「パッド」などを褥創に直接あててしまうと、却って圧迫が生じるため褥創は深くなります(下図;「間違い①」)。これを防ごうとして、少しずらした位置にパッドを当てて患部を浮かせようとすると、新たな褥創を作り出してしまいます(下図;「間違い②」)。正しい除圧は、下図の「正しい除圧」でも解るように、「点」ではなく「面」全体で行うようにします。

 

 

また、ドーナツのような形をした、真ん中に「穴」の開いたパッド(円座)が「褥創治療法」に市販されています(右下写真)。 教科書にも、褥創に対してこのタイプの「褥創パッド」を使用することが書かれていますが、「ドーナツ型パッド(円座)」は上図の②と同様に、周囲の血行を遮断して、却って局所に圧力を集中するため褥創が悪化すると考えられるようになって来たため、人間の褥創治療では現在殆ど使用されていません。

 

 

③体位の変換

人間の場合は、ずっと同じ姿勢で寝ていると同じ部分が圧迫され続けるため、2時間ごとに体位を変換して同じ場所に褥創が出来ないように予防するのが一応「正しい」と考えられています。しかし、最近ではウォーターベッドや高機能エアマットなど、除圧のための機器が改良され、体位変換の必要性は低くなっているようです。また体位を変換することで新たに褥創を作ってしまう可能性も指摘されており、必ずしも「体位変換」が必要なのかどうか、実際にはまだ良く判っていない部分もあります。特に動物の場合は、体位を変換しても、自分で好きな体位に転がってしまうことも多く、個体によって「右下が好き」「左下が好き」という好き嫌いがあることも多いので、エアマットや低反発マットなどでうまく除圧が出来ている場合には敢えて頻回の体位変換は必要ないのかもしれません。

 

④周囲の毛を刈る

褥創とその周囲を清潔に保つために、バリカンを使って広めに毛を刈っておくことが重要です。毛が「クッション」の役割しているように思われるかもしれませんが、実際には褥創の中に入り込んで「異物」となったり、浸出液や壊死組織がこびりついて汚くなったり、汚染や感染の原因となることも珍しくありません。また褥創を洗ったり、ラップや吸水シート(下記参照)などを褥創に固定する際にも、毛を刈っておくと非常に処置がし易くなります。したがって、褥創の周りの毛は常に短く刈っておくことをお勧めします。

 

⑤褥創の洗浄方法

褥創は出来れば毎日洗浄します。お尻の近くなどで尿や便が付きやすい場所にある場合には、排尿・排便のたびに洗う必要がある場合もあります。洗浄は、体の小さな動物ならお風呂場へ運んでシャワーで洗うことも簡単に出来ますが、中型犬くらいになるとそれもなかなか大変です。特に「寝たきり」の状態の場合には、洗ったり乾かしたりするのがとても難しくなります。そこで、100円ショップなどで売られているプラスチックのスプレー瓶(噴霧器)を使用して、ぬるま湯で洗うのが便利です。「傷」は乾燥したり壊死組織が多量に存在すると、痛みを生じます。しかし湿潤環境を維持して「肉芽組織」で覆われている限り、ぬるま湯で洗浄しても痛みを生じることは殆どありません(但し冷たい水で洗うのは、刺激にもなりますし、局所の温度が低下して血行が悪くなる原因にもなりますので、避けた方がよいでしょう)。
まず、周囲の皮膚の汚れをよく落とします。ぬるま湯で汚れをふやかしながら、ガーゼなどで優しく拭うようにして洗うようにしてください。褥創の内部は、特にやさしく洗うようにします。あまり勢いよくスプレーしないようにしてください。褥創内部は、決してゴシゴシ擦ったりして洗ってはいけません。また当然のことながら、消毒はしてはいけません
周囲の皮膚の汚れがどうしてもなかなか取れない場合には、低刺激性のシャンプーなどを使用しても構いませんが、シャンプーに含まれている界面活性剤にも細胞障害性がありますので、なるべく褥創内には入らないように注意し、洗浄後は充分洗い流す必要があります。

 

⑥壊死組織や感染がある場合

このような場合はなるべく自宅で治療せずに、「創傷治療」に詳しい病院できちんと治療してもらう方が安全です。治療の基本は「感染創」の治療と同様ですが、褥創の場合にはwet to wet dressing*のように「ガーゼやドレッシング材を創傷内に詰め込む方法」は取るべきではありません。壊死組織がある場合には外科的にデブリードマンしますが、出血するほどしっかりとする必要はありません。ある程度でデブリードマンができたら、後は毎日少しずつ融解させる方法をとりながら、壊死組織を段階的に取り除いてゆきます。感染がある場合には抗生物質の全身投与を行います。抗生物質は、血行の悪くなった場所や壊死した組織には到達しませんが、全身性の感染・敗血症を防ぐために、褥創の感染徴候が無くなるまでは投与する必要があります。

 

⑦褥創のドレッシング方法

褥創に対するドレッシング法として最も便利なのは、 「ラップ療法=開放性ウェットドレッシング法」です。これはサランラップやクレラップなどの「食品包装用」のラップを使用する方法です。ラップは厚みが無いため、褥創を悪化させることがありません。褥創の大きさに対し、ラップは大きめに切って直接創面にあてます。ラップの周囲を粘着テープなどで皮膚に固定します。このとき、毛が生えたままだとテープによる固定が困難になります。
ラップには吸水性が無いため、浸出液がはみ出して来て濡れてしまいます。そのため、ラップの上から、ラップよりも一回り大きい「ペットシーツ」などをあてて浸出液を吸い取る必要があります。部位によっては紙オムツを利用することも可能です。
ラップがどうしても使い難いとき(テープで固定できない、すぐにずれてしまう、など)は 、オムツやペットシーツに荷物梱包用の業務用テープ(ガムテープの透明なやつです)を直接貼り付けて、その部分を創面にあてるようにして使用します。要するに、オムツやシーツのザラザラした面が直接創面に当たらないようにしてあげればよいのです。

 

「ラップ」による褥創の「開放性ウェットドレッシング療法」の理論を示した模式図。
「褥創治療の常識・非常識」(鳥谷部俊一・著 三輪書店)より引用しました。

 

▼褥創に便利な自家製ドレッシング材の作り方はこちらで紹介しております。ご参考にしてください。
「自家製ドレッシング材の作り方」

 

⑧その他、注意点など

壊死組織が残っている場合でも、上記の「ラップ療法」で被覆している間に徐々に壊死組織が融解して、健康な肉芽組織が増殖してきます。浸出液が多めのときは、ラップに小さな穴を複数開けたり、水切り用の穴が開いた「穴あきビニール」などを使用してもよいでしょう。創面が乾いている場合には、白色ワセリンなどを薄く塗ってからラップをするとよいでしょう。ラップやオムツなどを固定する上で注意すべきことは、テープや包帯をきつく巻きすぎて血行を阻害したり、更なる圧迫を作って新たな褥創を作り出してはならない、ということです。
褥創は、そもそも「寝たきり」になっていること自体が原因なので、その原因を除去することが出来ない以上、完全な「治癒」が見込めない場合も多々あります。しかしその様な場合でも、感染を防ぎ、褥創の更なる拡大を防ぐために適切な処置を継続することはとても重要です。
人間では褥創を外科的に手術で治す治療法も行われています。しかし、手術による方法は一時的には治ったように見えますが、原因が除去されていないために、すぐにまた同じ部位に褥創が再発します。そのたびにまた全身麻酔をかけて手術をする、と言うのは決して良い方法とは考えられません。これは動物でも同様で、褥創を手術で治す方法はお勧めではありません。

 

・ラップを固定するのはどんなタイプのテープが適切なのか?
・ラップは動物の体に貼り付けるのではなく、ペットシーツやオムツに貼り付けた方が良いのではないか?

・ペットシーツやオムツを動物の体に固定するのはどんな方法が良いのか?粘着テープでよいのか?幅の広い柔らかい包帯を軽めに巻いて固定するのが良いのか?あるいはネットやストッキングなどを利用するのはどうなのか?
・体位変換はすべきか?不要か?必要だとすれば、どのくらいの間隔ですべきか?
・海水浴用のエアマット以外に、「使える」除圧器具にはどんなものがあるか?

 

 以上のような点に関しては、それぞれのケースにより「適した方法」が違ってくると思われます。今後様々な意見を取り入れながら、何が「最良の方法」なのか、考え続けてゆきたいと思います。

 

*wet to wet dressing;感染や壊死組織が残る創傷内に、生理食塩水で浸したガーゼを軽く詰めて、さらにその上から濡れたガーゼ(または防水ドレープやラップを使用する場合もある)で全体を覆って、乾燥を防ぎつつ、ドレナージを行うドレッシング法。生食ガーゼは1日数回交換する必要がある。交換の際にガーゼに壊死組織が付着して取り除かれる。つまりこの方法は、デブリードマンを目的としたドレッシング法である。

 

2017.11.02(木)

▽「熱射病」その予防と応急処置

夏場に頻繁に発生する救急疾患のひとつに、「熱射病」があります。熱射病は、日中の炎天下に長時間散歩や運動をさせたり、高温の閉め切った室内で留守番をさせたり、あるいは車の中に置き去りにしたり、と言った場合に多く発生が見られます。特に夏休みなどの行楽シーズンには、旅行先でこのような事態に遭遇する可能性もありますので、いざと言うときに慌てず適切な応急処置ができるように、ある程度の知識を持っておくことはとても大切なことです。
万が一、熱射病になってしまった場合でも、早い段階で適切に処置をすることで、重症になるのを防ぐことができます。しかし高体温の状態のまま長時間経過してしまった場合には、重症となり命を落とすことも稀ではありません。
大抵のケースでは、熱射病はその発生を予防することが可能なことが多く、従って熱射病は「なってから治療する」よりも「ならないように予防する」ことが重要である、と言うことが出来ます。

 

▽「熱射病」の症状

「熱射病」はその名の通り、体温が異常に上昇してしまうことで引き起こされる病気です。正常な犬や猫の体温はおよそ38.5度くらいですが、熱射病になると40~43度くらいにまで上昇します。熱射病の動物は呼吸が速くなり、口を開けて舌をダラッと出した状態で呼吸する「開口呼吸」という状態が見られます。また涎が大量に出ることもあります。中程度の熱射病では、動物はぐったりして、立ち上がったり歩いたり出来ないようになります。そしてこのような状態が長引くと、脱水が進行してショック状態となり、痙攣や発作などの神経症状を起して、場合によっては命を落としてしまうこともあります。
「日射病」というのは、熱射病のひとつですが、特に直射日光に曝された場合に起こるものを指します。日射病では、全身の体温の上昇と共に、直射日光により頭部の表面温度が異常に上昇することで、脳の浮腫(水ぶくれの様に腫れてしまうこと)が引き起こされるので、痙攣などの神経症状が比較的頻繁に発生します。
病態が進行して「ショック状態」になってしまうと、それまで激しかった呼吸が弱々しくなり、止まってしまうこともあります。庭先や車内などでぐったりしている状態の犬を発見し、その原因として熱射病が強く疑われる場合に、もしも呼吸が弱い、あるいは殆ど停止しているようなときは、非常に危険な状態であると判断されます。このような場合には、以下に説明するような処置を迅速に実施すると共に、直ぐに近くの動物病院で診察してもらう必要があります。

 

▽「熱射病」の応急処置

ここで説明するのは、「熱射病」が強く疑われる場合に行うべき「応急処置」です。応急処置は、あくまで病院に連れて行くまでの緊急的な処置であり、「これを行えば病院に連れていく必要がない」、ということでは決してありません。処置によりある程度状態が落ち着いたとしても、他に異常がないかどうかを調べるため、病院できちんと診察を受けることをお勧めします。
熱射病の動物に対してまず一番最初にすべきことは、体温を下げることです。人間の熱射病では、「体温が正常になるまでに要した時間が長いほど死亡率が増加した」という報告があります。つまり、できる限り早く体温を下げる処置を開始する必要があるということです。まず動物を涼しい場所に移動させます。体温を下げる処置として一番手っ取り早いのは、動物の体にホースで直接水をかける、あるいは全身を水に浸けてしまう事です。このとき注意しなければならないのは、決して氷水やあまりに冷たすぎる水を使用してはいけない、と言うことです。氷水や冷水を使用すると、体の表面の血管が収縮することで、却って体の奥に熱が篭ってしまい、結果として体温の下降を妨げることになるからです。自分の手で触って、ちょっとぬるいくらい(17~20度位)が丁度良いでしょう。
その他、水を体の表面にスプレーする、濡れタオルをかける、などの処置を行うことが出来ます。病院に到着するまでの車内では、このような処置を継続することが重要です。このとき同時に、うちわや冷風ドライヤーで水分を蒸発させながら、蒸発したらまた濡らすことを繰り返すと、蒸散により熱が奪われるので、効率良く体温が下降するのを助けます。
濡れタオルなどで体を冷やすときは、体全体を冷やすことはもちろん重要ですが、特に脇の下や内股、首の周りなどの「太い血管」の走行している場所を重点的に冷やすと効率的です。人間ではよく氷嚢や「ゼリーシート」などで額を冷やすことがありますが、額には太い血管はありませんので、この方法は実際には有効ではありません(但し「気持ちが良い」と言う意味では無駄ではないかもしれません)。

 

あまり熱心に冷やしすぎて、体温が下がり過ぎてしまうことがあります。特に猫や小型犬では、このような事故が起こりやすいので、冷やし過ぎないように注意が必要です。出来れば直腸から体温を計って、39度前後になったら一旦冷却処置を中止するのが安全な方法です。
熱射病による「高体温」は、炎症や感染症による「発熱」とは異なりますので、「解熱剤」は使用しても全く意味がありません。却って消化管潰瘍や腎不全などの副作用が出てしまうこともありますし、そもそも獣医師の指示を受けないでこのような薬剤を使用することは非常に危険ですから、このようなことは絶対にしないで下さい。

 

▽「熱射病」にしないための予防

とにかく「熱射病」を引き起こすような環境に、動物を置かないことが基本です。日陰の無い庭に放して(あるいは繋いで)置かないこと、(絶対に!)車内に置き去りにしないこと、閉め切った室内で留守番させないこと(窓を開けるなどして換気を良くする、あるいは暑くなる時間帯にはクーラーが点くようにタイマー予約をしておくこと)などが大切です。
肥満の犬、ブルドッグやパグ、シーズ-などの「短頭犬種」、高齢の動物、心臓や呼吸器系に疾患を持っている動物は「熱射病」の発生リスクが高いので、特に注意が必要です。また、被毛の密な北方原産の犬種なども、暑さには弱いので、特に夏場は注意深いケアが必要になります。
以上の点に注意すれば、殆どの場合熱射病を防ぐことは可能ですので、普段から気をつけて、熱射病から動物達を守り、暑い夏を乗り切りましょう。

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