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「褥創」の治療・管理について

2017.10.31(火)

◆「褥創」とは何か

「褥創」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?解り易く言えば、「床ずれ」のことです。人間では、寝たきりのご老人など、長期間ベッドに横になったまま自由に体を動かすことが出来なくなった患者さんなどでよく見られます。腰骨や仙骨部、踵など、骨が飛び出した部分がベッドに圧迫されて、筋肉や皮下組織が血行障害を起こして壊死し、皮膚が破れて穴が開いてしまった状態を言います。

 

褥創は、管理の仕方が悪いとどんどん深くなって、骨が露出してしまうこともあります。また感染を起こして化膿してしまうと、非常に強い悪臭を伴い、菌が全身に回って敗血症と言う状態になり、命に関わることもあります。特に屋外で飼育されている動物の場合は、褥創が出来ているのに気がつかずそのままにしていると、ハエが卵を産みつけて「ハエウジ症」と呼ばれる状態になってしまうこともあります。

 

褥創が出来る原因はもちろん、病気や老衰のために「立てない」状態になることです。多くの場合は「寝たきり」の状態になって、腰(大転子)や肩、踵などに褥創が出来るのが一般的ですが、後肢麻痺などで前足だけで歩き回っているような場合でも、「本来地面について歩かない部位」を接地して歩いていると、その部分に褥創ができます。また褥創が出来やすくなる要因として、栄養状態が悪く痩せていたり、糖尿病や腎不全などの基礎疾患を持っていたり、便や尿が皮膚にこびりついていたりするような衛生環境の悪い状態などを挙げることが出来ます。小型犬や猫などの小さな動物では、体重が軽いため、あまり褥創は見られません。それに対して、中型犬以上の体重の重い犬では、寝たきりになるとすぐに褥創ができます。特に癌の末期や痴呆により立てない状態になった場合には、栄養状態も悪くなるため、痩せて骨が出っ張ってくるので、体の様々な場所に褥創が出来やすくなります。

 

 当院では「創傷治療」に力を入れており、様々な「治り難い傷」の治療を行っています。そして当然ながら褥創もその中のひとつであると捉えています。しかしながら、「褥創」が出来るような患者と言うのは多くの場合、高齢や慢性疾患の末期などで自宅療養しているケースが多く、また「寝たきり」の20kg、30kgあるような犬を車で運んで通院するのは本人も家族の方も非常に大変なため、「褥創」の治療のために動物病院に通院する、というケースはあまり多くありません(と言うか、殆どありません)。大抵の方は自宅で、自己流で「パッド」をあてたり消毒したり、何か薬を塗ったりしてそれぞれに管理していることが多いようですが、うまく行かずに相談を受けることも時々あります。動物の高齢化に伴い、恐らくかなり多くの方が「褥創」の管理に苦労しているのではないかと思われますが、上記のような理由により、私たち獣医師が「褥創治療」に関わるチャンスと言うのは思いのほか多くはありません。
このような状況をもっとよく知るため、そして誰にも相談できず「褥創治療」に苦労し、悩んでいる方たちのために、少しでも力になれるようにと考え、「褥創の治療」について少し纏めてみることにしました。

 

 以下に詳述するのは、私の今までの経験と「創傷治療」一般から得た知識、および人間の褥創治療を参考にした、現段階で考えられる「最良であろう」と思われる褥創の管理方法です。しかし、実際の管理方法は、褥創の場所や大きさ、深さ、壊死組織や感染の有無、動物の全身状態(全く動けないのか、寝たままでも這いずり回るのか、など)、基礎疾患の有無、動物の性格などにより、個々のケースで変えてゆく必要があります。また、以下に説明する方法が将来的にずっと「最良の方法」であり続ける、とは考えておりません。以下の方法を参考にしていただき、うまく行かない点、問題点などがあれば、掲示板メールなどで遠慮なくご意見を頂きたいと思っています。なるべく多くのご意見を参考にしながら、より良い管理方法を、皆様と一緒に考えてゆきたいと思っておりますので、ご協力お願いいたします。