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傷を消毒してはいけない

2017.10.31(火)

傷は決して消毒してはいけません。消毒薬は「殺菌力」に勝る「組織障害性」を持っています。細菌感染を防ごうとして傷を一所懸命に「消毒する」と、傷はどんどん悪化します。

傷を消毒することは「傷を乾燥させる」ことと同様に、傷の治癒を遅らせる行為です。消毒剤は肉芽組織の主体となる「線維芽細胞」を死滅させ、表皮細胞を死滅させ、また白血球などの「免疫細胞」も効率良く殺滅します。殆どの消毒剤は、「細菌」を殺すよりもずっと低い濃度で、組織の細胞を殺滅する能力を持っています。したがって、傷を消毒すると、「敵(細菌)」を殺そうとして毒薬をばら撒いたのに、敵は殆ど死なずに「味方(組織の細胞)」だけが死んでしまった、と言う状態になります。つまり、創傷治療の面から見ると、消毒は「有害行為」ということになります。

また、多くの消毒剤では、創面で「殺菌効果」を発揮している時間は数秒から数分程度であると言われています。医療現場で最もよく使用される消毒剤のうちのひとつである「イソジン(ポピドンヨード)」の場合、皮膚に塗布してそのまま乾かした場合、約30分程度に渡って効果が持続すると言われていますが、それでも例えば1日2回消毒したとして、創面が消毒された状態になっているのはほんの1時間です。のこりの23時間は消毒する前の「細菌がいっぱいいる」状態に戻っています。1日24時間のうち、1時間だけは細菌が少ない状態になっているけど、残りの23時間は「消毒しないのと同じ状態」であることに、何か意義があるのでしょうか?

「でも、消毒しないと化膿(感染)するじゃないか」と考える方もまだ沢山いることと思います。実は、消毒してもしなくても、「感染」の発生とは関係がないということが明らかになっています。上記のように、いくら消毒しても「細菌」はいなくなりませんから、傷の管理が悪いと「感染」を起こすことがあります。また反対に、傷の管理が適切なら、「細菌」がいても「感染」は生じません。つまり、「感染予防」の観点から見ると、傷の消毒は理論的に「無意味」ということになります(これを理解するためには、「創傷の感染の定義」を理解すること、および「創傷の適切な管理法」を知ることが必要になります)。

ということは、傷を消毒することは「無意味」であり「有害」でもある、ということですから、傷を消毒すると言う行為に医学的正当性はない、ということになるのが解ると思います。