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フィラリアの予防について

2017.11.01(水)

▽ フィラリアのライフサイクル

「フィラリア」とは犬や猫などの心臓(猫の場合は主に肺動脈)に寄生する、体長10~15cm程度の細長い形をした「寄生虫」の一種です。 フィラリアは、フィラリアの感染子虫を持った「蚊」に刺されることにより感染します。犬や猫の心臓に寄生したフィラリアの親虫は、「ミクロフィラリア」と呼ばれる小さな子虫(この子虫は顕微鏡でしか見ることができません)を産みます。ミクロフィラリアは血流に乗って全身の血液中に行き渡りますが、この血液を蚊が吸血することによりミクロフィラリアも一緒に蚊の体内に吸い込まれることになります。ミクロフィラリアは蚊の体内で成長し、やがて「感染子虫」と呼ばれる状態になります。そして蚊が再び吸血のために動物の皮膚に「針」を刺して穴を開けると、感染子虫は蚊の体内から脱出し、皮膚に開いた穴から動物の体内に侵入します。体内に侵入したミクロフィラリアは脱皮・成長を繰り返しながら、数ヶ月後には心臓に到達し、そこで再びミクロフィラリアを生むようになります。

 

▽フィラリア症の症状

フィラリア症の症状は主に、心臓に寄生した親虫により引き起こされます。寄生している虫の数により症状の重症度が多少変わりますが、多数の虫が寄生している場合には重度の心不全を引き起こし、様々な症状が見られるようになります。典型的な症状としては、
1)腹水が貯まってお腹が膨れる
2)呼吸が苦しく、咳が出る事もある
3)疲れやすい、散歩中などに倒れる
4)心臓発作、死亡
などを挙げることが出来ます。フィラリア虫体が肺動脈から右心室-右心房を乗り越えて後大静脈にまで到達した状態を「ベナケバ症候群」と呼びますが、この状態になると特に重い症状が見らるようになり、赤黒い尿が見られることもあります。

 

▽フィラリアの検査

フィラリア予防薬は原則的に、フィラリアの寄生が無い状態で投与するのが基本です(既に寄生している場合には、保存的治療と併用して予防薬を投与する場合もありますが、ある程度のリスクを伴う事になります)。通常は、毎年の予防を始める前に、フィラリアの検査を実施することが薦められます。フィラリアの検査には、ミクロフィラリアを検出する方法と、親虫の抗原を検出する方法があります。親虫が多数のミクロフィラリアを生んでいる場合には、血液をほんの1滴スライドグラスに垂らして顕微鏡で観察するだけで簡単にミクロフィラリアを確認する事ができます。しかし、親虫の寄生期間が短い場合や「雄」の親虫しか寄生していない場合、あるいは検査をせずにフィラリア予防薬を投与してしまった後などでは、たとえフィラリアが心臓に寄生していてもミクロフィラリアが検出できない場合があります。そこで、より確実にフィラリアの寄生を確認する方法として、血清学的にフィラリア虫体の抗原を検出する、と言う方法があります。

 

▽フィラリアの予防

フィラリアは、外科的に摘出したり、駆虫薬を投与して心臓に寄生している親虫を殺滅したりなどの「治療法」を選択する場合もありますが、いずれの場合も非常に高いリスクを伴う「治療」となります。「治療」行為により余計に状態が悪化したり、最悪のケースでは死亡してしまうような危険性も指摘されています。従って、フィラリアは「罹ってから治療する」のではなく、「罹らないように予防する」のが基本となります。通常1ヶ月に1回、予防薬を飲ませる事で、ほぼ確実にフィラリアを予防する事が出来ます。予防の期間は地域などにより多少異なりますが、当院では5月下旬から11月下旬まで、毎月予防することをお勧めしています。