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ハムスターに噛まれて死亡

2004.10.01(金)

nikkansports(2004/9/27)
http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-040927-0003.html
共同通信
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20040927/20040927a4990.html

 

《以下引用》

埼玉県に住む40代の男性が今年2月、飼っていたハムスターに指をかまれた直後に意識不明となり、搬送先の病院で死亡していたことが27日までに分かった。傷口からハムスターの唾液(だえき)が体内に入り、急激なアレルギー反応である「アナフィラキシー」が発生、持病のぜんそくを誘発したという。
ハムスターなどペットの齧歯(げっし)類にかまれたのが原因のアナフィラキシーは1995年以降、広島県など全国で17人報告され、16人は大事に至らなかったが、1人は植物状態になった。かまれた直後の死亡例は初めてとみられる。
診察した清田和也さいたま赤十字病院救命救急センター長は「常に起きるわけではないが、アレルギー体質の人や、かまれる危険の高い獣医師は気を付けた方がいい」と注意を呼び掛けている。(共同)

[2004/9/27/09:10]

 

《コメント》

「埼玉県に住む40代の男性が、飼っていたハムスターに噛まれてアナフィラキシーを起こし、死亡した」というのがニュースの内容です。記事によるとこの男性は、「持病の喘息」を持っていたようで、アナフィラキシーを起こしたことにより喘息発作を併発したために死亡したということのようです。

私たち獣医師にとっては、「ハムスターに噛まれるとアナフィラキシーを起こす可能性があるので危ない」というのは、実は非常に有名な話で、ペットを扱う獣医師なら誰もが知っていることです。ですから、ハムスターの診療をするときは結構緊張しながらしているんです、実は。

もちろんハムスターの唾液に猛毒が含まれている訳でも何でも無くて、これはハムスターの唾液に含まれる成分に対して人体が「アナフィラキシー」を起こすことでショックが生じるためにこのようなことが生じることが知られています。アナフィラキシーというのはつまり、急性に重度のアレルギーを起こすことで、軽いものなら蕁麻疹や「花粉症」に似たような症状で済みますが、重症になるとショック状態になり血圧低下や呼吸困難を起こすこともあり、もしもこれに喘息発作などが併発すれば、呼吸停止を起こして死亡する可能性は充分にあります。

アナフィラキシーはアレルギーの一種ですから、当然ながらハムスターの唾液に限らず様々なものにより引き起こされます。例えば蜂に刺されて重症になることがあるのも、「蜂の毒」によるのではなくて、「毒に対するアナフィラキシー」であると言われています。アナフィラキシーは食べ物に含まれるアレルギー物質で起こる事もあります。有名なところでは蕎麦、あるいは海老や蟹などの甲殻類も比較的強いアレルギーを起こすことがあります。そう言えば少し前のテレビ番組で、デートの前に海老を食べた男性とキスをしてアナフィラキシーを起こし、呼吸停止を起こした女性の話をやっていました。もしもこの女性が死亡してしまった場合、キスをした男性は「過失致死」となるのでしょうか?デートの直前に海老を食べたばっかりに・・・?

「犬や猫でも気を付けよう」などと書いてあるサイトなどもあるようですが、もちろんどんなものに対してもアレルギーが起こる可能性はあるし、動物に口移しで食べ物を与えたりするのは色んな意味でお勧めはしませんが、今のところ「犬や猫」で同様の事態が生じたという報告は、私の知る限りではありません。ですから、無闇に怖がる必要はありません。