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「ペットを飼う前に」

2004.10.23(土)

 犬や猫、その他の動物達と共に生活することは、安らぎや楽しみなど、私達にかけがえのない時間や経験を与えてくれます。このような素晴らしい経験をした人の多くは、もはや「ペットのいない生活」など考えられないようになるのではないでしょうか?
 しかし一方では、「動物を飼う」ということは、重大な責任を伴う「一大事業」でもあるのです。生活環境が変わったから、面倒になったから、と言って途中で放り出すことは出来ません。長期の旅行に行けなくなったり、住む場所が限定されることもあります。病気や怪我をすることだってあるでしょう。実際にペットを飼ってしまってから「さて困った」ということにならないように、今回は「ペットを飼う前の注意」を中心にお話を進めて行きましょう。

 

【ペットを飼う前に・・・】

ペットと暮らす生活をより快適なものにするためには、実際にペットを飼う前に、様々な準備をする必要があります。多くの場合はまず、どのような動物をペットとして迎え入れたいのか、ということから考えるのではないでしょうか?犬を飼いたい、猫を飼いたい、あるいは小鳥を飼いたいという人もいるでしょう。しかし、「飼いたい」という希望と、実際に「飼うことができる」かどうかということは、別の問題です。「ペット不可」のマンションで動物を飼ってしまったために、結局その子を途中で手放さなければならなくなったり、あるいは部屋を明渡さなければならなくなったりすることもあります。このようなことにならないように、現在の自分の生活環境と、そこでペットを飼育することができるかどうかという現実をよく考えてから、実際に飼う準備を始めなければなりません。

 

ここで最も注意すべきことは、本来「ペット」に適していない、野生動物などの「珍しい動物」を興味本位で飼うことは、絶対に避ける、ということです。大型の爬虫類や珍しい両生類などを飼育するためには、専門的な知識や特殊な設備が必要となることがあり、一般の方にはあまりお勧めできるペットとは言えません。アライグマやキツネ、リス、サルなどは野生動物なので、ペットとして一般の家庭で飼育すべき動物ではありません。これらの動物は、人に慣れずに逃げ出して野生化し環境問題を引き起こしたり、人に感染する病気を持っている危険性もあり、動物園などの専門的な施設以外での飼育はすべきではありません。人畜共通感染症の問題からプレーリードッグなどの野生リスやペット用のサルが輸入禁止になったのは、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。

 

気を付けるべきは、野生動物ばかりではありません。例えば犬を飼うときでも、どんな品種の犬を選ぶかによって、性格や必要となる生活環境に大きな差が生じてきます。例えば、ワンルームマンションの室内でシェパードなどの活動的な大型犬を飼うことには無理があります。密集した住宅地で、ビーグルなどのよく吠える犬種を飼ってしまうとトラブルのもとになるかもしれません。また今まで殆ど犬を飼った経験のない人や、しつけに関する知識のあまりない人にとっては、日本犬や気性の激しいテリア系などの犬種は、飼育が難しい場合もあります。ついつい犬を甘やかしてしまい、厳しくしつけることが苦手なタイプなのか、リーダーシップを持って犬との主従関係・信頼関係をしっかり築くことができるタイプなのか、自分自身の性格によって、適している犬種とそうでない犬種があります。自分では犬好きだと思っていても、実は猫との相性の方が良い、ということもあるかもしれません。

 

それから、非常に現実的な話になりますが、自分自身の経済状態も、ペットを飼う上で事前に考慮すべき項目のひとつです。たとえ保護したり譲り受けたりしたような場合でも、その動物を責任を持ってきちんと飼って行くということは、思ったよりお金のかかることです。ワクチンやその他の予防には毎年決まった金額の出費がかかりますし、不妊手術にもそれなりの金額が必要になります。特に大型犬を飼うような場合は、食費も薬代も、猫や小型犬の場合の何倍ものお金が必要になりますし、病気をして手術や入院をしたときには更に・・・。お金の話ばかりすると空しくなってしまうかも知れませんが、ご自分の経済状態に見合った動物を選ぶことは、自分自身とペットとなる動物、両者の幸せにとってとても重要なことなのです。

 

悲しいことに、ペットの人気にも流行り、廃りがあります。しかし、「テレビのCMで流行っているから」とか、「好きな芸能人が飼っているから」というような安易な考えでペットを飼うことは、絶対にお勧めできません。またプレゼントとして子犬や子猫を他人に贈ることも、是非とも避けて頂きたいことのひとつです。

 

実際に飼ってしまってから、「こんなはずじゃなかった」と後悔することがないようにするためには、自分自身の生活環境や性格にあった動物を、パートナーとして選ぶことが非常に大切です。

 

【実際にペットを飼う際の注意】

ペットの入手先としては、多くの場合ペットショップやブリーダーから購入すると言う方が多いのではないでしょうか。中には知り合いの家で生まれた子犬や子猫を譲り受けることもあるでしょうし、あるいは迷い犬や猫を保護して里親になるということもあるかもしれません。大切なことは、実際に動物を家に迎え入れる前に、その動物や品種に関してできる限りの情報を入手してしっかり準備をする、ということです。どのような飼育環境を用意したらよいか、食餌は何を与えるのか、ワクチンや予防などは何が必要か、など事前にしっかり予習しておきましょう。また、ペットショップでは判らないこともありますが、購入予定の子犬・子猫の親や兄弟に、遺伝的な病気などの発生がないかどうかも、きちんと聞いておくべきでしょう。良心的なブリーダーさんなら、きちんと詳細に教えてくれるはずです。

 

生まれて間もない小さな子犬や子猫はとても可愛いものです。しかし、まだ1回もワクチンを接種していないような幼若な動物は環境の変化に非常に弱く、病気に対する免疫も無いため、飼い始めて直ぐに具合が悪くなったり感染症に罹って死んでしまったりすることもあります。あまりに幼弱な動物を飼うことは非常に高いリスクを伴いますので、出来れば(犬や猫なら)ワクチン接種の済んだ2~3ヶ月齢以上の動物を飼うようにするのが安全です。

 

「動物病院」はペットを飼ってから行くところだ、と言うのが常識的な考えかもしれません。しかし大抵の動物病院では、「これからペットを飼いたい」という相談も、きちんと受け付けてくれるはずです。事前に電話などで問い合わせてから、相談してみると良いでしょう。

 

家族で生活している方の場合、「これは娘の犬だ」とか、「母の猫だ」という言葉を口にした経験はないでしょうか?例えば自分に「孫」が生まれると判ったとき、「あれは娘の子供だから自分は関知しない」という言い方をするでしょうか?ペットも本来「家族の一員」として受け入れられるべきであると、私は考えますので、家族全員が飼い主である、という認識を持って欲しいと思います。

 

【信頼できる獣医さんを見つける】

かかりつけの動物病院があって、信頼できる獣医師がいる、ということは、これから長い年月をペットと共に生活してゆく上でとても大切なことです。「良い獣医師」かどうかを、客観的に判断する基準は残念ながらありません。また、ある人にとっては「いい先生」でも、他の人にとっては「そうでもない」と言うこともあるでしょう。「良し悪し」の基準は人によって異なります。「じっくりと丁寧に説明してくれる先生」が良い、と言う人もいれば、「完結に解り易く言い切る先生」の方が安心できる、という人もいるでしょう。若くて気鋭の先生が良い、と言う人もいれば、年配のベテランの先生の方が安心感がある、という人もいるはずです。場合によっては「診療費が安い」ことが「良い病院」、という認識の人もいることでしょう。「人の噂」は有用な情報のひとつではありますが、100%信用せずに、自分の目で確かめることが大切です。特に初めてペットを飼うときは、幾つかの病院で「健康診断」などを受けてみて、自分とそのペットにとって一番相性が良いと感じた病院を「かかりつけ」にすると良いでしょう。

 

【「永遠の命はない」ということを理解する】

「命」には必ず「終わり」があります。私達がペットとして飼育する殆どの動物は、人間よりもずっと早く歳を取ります。逆に言えば、人間は非常に長寿の動物である、ということが出来ます。従って、私達人間は多くの場合、自分と生活を共にしてきたペットの最期を「看取る」運命にあります。「うちの子が死ぬときのことなんて想像したくもない」というのが一般的な意見かもしれません。もちろん、常にこんなことばかり考えていたら、確かに気が滅入ってしまいますね。しかし、永遠の命はありませんから、「そのとき」はいつか必ず訪れます。「この子の一生は自分のそれより短いのだ」ということを、心のどこか片隅に置いておくことで、限りある命の大切さを認識し、かけがえのない時間を大切にしよう、という気持ちが生まれてくるのではないでしょうか?

 

人間の子供の場合には、「生まれること」が判ってから実際に生まれて来るまでに数ヶ月という準備期間があります。その間に両親は、オムツの代え方からミルクの作り方、お風呂の入れ方、予防注射についてなど、いろんなことを「予習」するのではないでしょうか?これはペットの場合でも同じことだと思います。長い年月を共に過ごすパートナーに関することですから、事前の準備はいくらしても「し過ぎる」ということはありません。「ペットを飼いたいな」、そう思った瞬間から、準備期間は始まっているのです。