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スギヒラタケで急性脳症?

2004.11.23(火)

gooニュース《http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20041023/20041023a5000.html
Yahooニュース《http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/medical_issues/
ほか

 

《コメント》

スギヒラタケというキノコを食した人が「急性脳症」を起こし、死亡する事故が山形県、秋田県を中心に東北地方で起きている。スギヒラタケは昔から食用に供されていたようで、私自身は食べた記憶はないが、写真を見るとなかなか美味そうではある。
http://www.enasan-net.ne.jp/furu_kino/sugihira.html
記事によれば、脳症を起こした人に共通しているのは、(恐らく)全員がこのスギヒラタケというキノコを食した事と、いずれの人も「腎機能が低下」していたことである。原因物質が本当にスギヒラタケなのかどうかはまだ不明であるらしいが、厚生労働省が注意を喚起している通り、腎不全の人はこのキノコを食べるのはやめた方が良いだろう。

スギヒラタケには毒性がない、というのが今のところの常識らしいが、一般的に「キノコ類」の摂取によるこうした事故は決して珍しい事ではない。ましてこのキノコは栽培が非常に難しいらしく、山奥に自生しているものを採取してきて自分たちで調理するのが普通らしいので、土壌の汚染や農薬などの散布に気付かず、口にしてしまう可能性も否定できないだろう。「天然もの」「自然の恵」は体に良い、と思いがちであるが、栽培を人為的に管理していないため、毒物などに関してはリスクの高い食物と言える。

少々気になるのは、(記事を読む限りでははっきりしないのだが)スギヒラタケを食べたのと脳症を発症するまでの時間が開きすぎているような気がする点である。通常、急性の中毒症状なら摂取後数分から数時間で発症するはずだと思うが、中には2週間くらい経過している人もいるような記事の書き方である。慢性毒性なら1回食べただけでは問題にはならないだろうし、やっぱりキーワードは「腎不全」だろうか?

それと、この地方ではスギヒラタケを食べる習慣がどのくらい一般的なのか、という問題もあるように思う。東京に住んでいれば、毎日食卓に上るようなものではないが、もしかしたら、山形や秋田ではどの家庭の食卓にも必ず殆ど毎日「スギヒラタケのお浸し」やら「スギヒラタケの天ぷら」が並ぶのかもしれない。もしそうだとすると、脳症を発症した腎不全の人たちが全員、その2週間以内にスギヒラタケを食べていたとしても、何ら不思議はないということになる。

あるいはスギヒラタケに良く似た新種の「毒キノコ」が大量発生したとか、今夏の猛暑や今秋の台風・長雨などの気象条件下では、通常は毒性を持たないこのキノコが毒性を持つようになる何らかのメカニズムがある、とか可能性は色々考えられるが、よく判らないうちはやっぱり食べない方が安全だろう。症状がこれだけ激しいと、必ずしも腎不全ではなくても、例えば小さな子供なども危ないのではないだろうか?