ブログ・コラム|大田区の動物病院なら、動物病院エル・ファーロ

  • 大田区・動物病院エル・ファーロ・電話
  • 大田区・動物病院エル・ファーロ・メニュー

高齢動物のケアについて

2017.11.02(木)

動物医療の発達や食餌・生活環境の変化、予防医学の発達により、犬や猫などの飼育動物の寿命は、この数年で飛躍的に長くなりました。それに伴って、加齢による老齢疾患の割合も増えてきました。同じ「長生き」をするならば、少しでも長く健康で楽しく暮らして行きたい、と願うのは、人も動物も同じことでしょう。ここでは、「高齢化」を迎える(あるいは既に迎えている)動物達のために、是非知っておいて頂きたいことを紹介します。

 

▽「何歳からが『高齢』なのか?」

「高齢、高齢」と言いますが、一体何歳から「高齢=シニア」と呼べばよいのか?と言う疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?よく、動物の年齢を人間の年齢に比較した「年齢対応表」と言うようなものを目にします。また、動物の年齢を人間の年齢に当てはめるための「式」と言うのもあるようです(例えば、《「動物の年齢」×4+16》など)。これらは「目安」としては非常に便利で解り易いのですが、私自身はあまりこう言った表や式を好んで使用しません。犬と猫では寿命が違いますし、同じ犬でも品種によりかなり寿命が違います。超大型犬と小型犬でもかなり違います。従って、特に「何歳から」と言う決まりはないのが現状ですが、だいたい7歳くらいから「シニア」、10歳を過ぎたら「老齢(=お爺さん・お婆さん)」と考えて、ほぼ差し支えないだろうと思われます。

 

▽「食餌内容の変化」

歳をとると、運動量も減りますし基礎代謝も低下します。したがって、同じ体重の若い個体に比較して、必要なカロリーが少なくて済むようになります。また、消化・吸収機能が低下してきますので、消化の良い食餌を与える必要があります。一般的に「シニア」との表示があるフードは、このようなことに気を付けてカロリーや蛋白質、脂肪などの含有量が低く抑えられています。もちろん、腎不全や心不全、糖尿病、アレルギーなど、何か特定の疾患を持っている場合には、それに適した療法食を与えることが大切です。関節炎予防のための成分が含まれた療法食もありますし、認知症の予防として、不飽和脂肪酸などが添加された犬用の療法食もありますので、必要に応じてこのような食餌を与えるようにしても良いでしょう。

 

▽「高齢になると発生し易い病気」

「高齢疾患」として最近非常に問題となっている病気のひとつは、腫瘍です。悪性の腫瘍は「癌」と呼ばれます。雌犬に発生の多い「乳腺腫瘍」は、若いときに不妊手術を受けておくことで、ある程度その発生を予防することが可能ですが、多くの腫瘍(癌)は遺伝的な要素が大きいため、発生を予防することは困難です。しかし、早期に発見することで治療が可能な場合も少なくありませんので、定期的に健康診断を受けたり、気になることがあればすぐに病院で診察を受けることが大切です。
その他、加齢に伴って発生の頻度が多くなる病気としては、心臓病や慢性腎不全、糖尿病や甲状腺などの内分泌疾患、白内障、関節疾患、歯石・歯肉炎などによる歯周病、などが挙げられます。不妊手術を受けていない雌(主に犬)の場合は「子宮蓄膿症」、雄犬の場合は前立腺疾患や会陰ヘルニア、肛門周囲腺の腫瘍などの発生率が非常に高くなります。

 

▽「本当に『歳』のせい?」

先に挙げたような「老齢疾患」の多くは、早期に診断し、適切に治療すれば、きちんと治る(あるいは進行を防ぐ)ことが可能なものが少なくありません。「近頃元気が無いけど、歳だから仕方が無い…」と思っているものが、実は「病気の症状」で、治療により改善することも決して珍しくありません。良くある「思い違い」には、次のようなものがあります。

 

・気力が無い、反応が鈍い…認知症、甲状腺機能低下症など(犬)
・怒りっぽい、痩せてきた…甲状腺機能亢進症(猫)
・疲れやすい、散歩に行きたがらない…心疾患、関節炎、爪の伸びすぎなど
・毛が薄くなってきた…甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など
・水を大量に飲み、尿も多い…子宮蓄膿症、慢性腎不全、糖尿病、副腎疾患など
・お漏らしをする、トイレ以外の場所で排尿する…認知症、膀胱炎、膀胱結石など
・口臭がくさい…歯周病、腎不全、口腔内腫瘍など

 

▽「普段の生活で気を付けること」

高齢になると環境の変化によるストレスを受け易くなるため、規則正しい生活をすることが大切です。病気で入院する場合は仕方がありませんが、ペットホテルに預けるのは出来るだけ最小限にするべきでしょう。コミュニケーションを良く取ることは、行動や身体の僅かな変化を見つける上でも非常に重要ですし、認知症の予防にもなります。家族と接触の機会の少ない、屋外飼育の犬は認知症になり易い、とも言われています。
高齢の動物は自分で毛繕いをしなくなり、爪も自然に削れなくなるので、ブラッシングやシャンプーをして皮膚や毛を清潔に保ち、爪や口腔内、耳垢や目ヤニなどをきちんと処理してあげることが大切です。また室内で排泄が出来るようにしつけておくと、体力が無くなって散歩に行けなくなったときにとても有利です。
歩くのも覚束ないような高齢の動物は、例え「屋外飼育」をしていた場合でも、室内で管理するようにします。特に「寝たきり状態*」の場合は、玄関先でも構いませんから、必ず室内で管理するようにして下さい。
「高齢による問題」は「病気」ではないので、病院に行っても仕方が無い…と考えている飼い主の方も多いかもしれません。しかし、どんな些細なことでも、困ったことは必ず動物病院に相談することをお勧めします。

 

*屋外飼育の犬・猫が寝たきりになると、傷口や肛門などにハエが卵を産みつけて蛆虫が発生(ハエウジ症)することがあるので、絶対に室内で管理してください。また中型~大型犬では、褥創(床ずれ)が生じることがあります。「褥創」については「こちら」を参考にしてください。