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「浸出液」の働き

2017.10.31(火)

▽浸出液とは何か?

「浸出液」とは何のことだかお解かりでしょうか?「浸出液」とは傷の表面から「ジクジク」とにじみ出て来る透明(あるいはやや黄色っぽい)液体のことで、「滲出液」と書く場合もあります。このジクジクした液体がたくさん出ることは、果たして傷が治る上で「好ましい事」なのでしょうか?それとも「悪い事」なのでしょうか?

浸出液が多量に出る場合は、「細菌感染している」と思われがちなようです。ジクジクしていると傷がなかなか治らないので、ガーゼで吸い取って早めに乾燥させる、というのが今までの治療法です。ところが実は、この「浸出液」の中には「傷が治るために重要な物質」がたくさん含まれているのです。

浸出液には様々な種類のサイトカイン、細胞成長因子が含まれていて、傷の治癒段階に合わせて、血小板や線維芽細胞、表皮細胞などが順序良く増殖・遊走するようにコントロールするのに大変重要な役割を果たしています。また、浸出液の中には白血球やマクロファージなどの免疫細胞が含まれており、感染を防御しています。浸出液が分泌される事で創傷面の湿潤環境が保たれ、傷の修復に必要な細胞がスムーズに移動する事が出来るので、傷の治癒が早まります。つまり、傷が正常に治るためには「浸出液」が分泌される事が必要不可欠なのです。

しかし、従来の「ガーゼ・包帯」による処置の方法では浸出液は創傷面に留まることが出来ず、創傷面は乾燥して壊死してしまいます。このため、創傷面に浸出液を保持し、乾燥を防いで傷の治癒を促進する目的で様々な種類の「ドレッシング材」が開発されるようになりました。(ドレッシング材についてはこちらをご覧下さい

 

▽「膿」と「浸出液」はどう違うか?

一見同じように見える「ジュクジュク」「ドロドロ」でも、膿と浸出液は全く異なるものです。「膿」は感染を引き起こした細菌と、それをやっつけようとして遊走してきた大量の白血球の死骸などが混じったものです。膿の中では細菌が大量に増殖しており、細菌から出る毒素などの有害な物質も含まれています。このため、膿は完全に取り除く必要があります。
膿と健康な浸出液の見分け方は簡単です。膿は白~黄色~茶色っぽく「ドロッ」としており、腐敗したような非常にくさい臭いがします。膿の溜まった組織では「感染」が起きているため、熱感や疼痛などの「感染徴候」が見られます。浸出液は「膿」よりもサラッとしていて、通常は透明感がありあます。血液成分が混入して赤っぽい色をしていることもありますが、膿のようにドロドロとしている事は殆どありません。浸出液もある程度臭いはしますが、腐敗しているようなくさい臭いはしません。

 

▽「カサブタ」とは何か?

痂皮;俗に言う「カサブタ」とは何でしょうか?カサブタとは傷の表面に染み出てきた浸出液が乾燥して固まったものです。傷の表面が乾燥すると傷を覆っている肉芽組織や表皮細胞の表層も壊死します。これらの壊死組織をも含めて「カサブタ」と呼ぶ場合もあります。カサブタが出来る、と言う事は傷が乾燥していると言うことなので、理想的な傷の管理が出来ていない、ということになります。もちろん、ちょっとした擦り傷などはカサブタを作って治癒させても全く問題ありませんが、大きな傷ではカサブタ=乾燥・壊死ですから、カサブタを作らないように治療する事が重要です。