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犬のワクチン接種について

2017.11.01(水)

▽ワクチンの種類

現在、複数の製薬会社から様々な種類の混合ワクチンが市販されていますが、一体「何種混合ワクチン」を接種したらよいのか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか?ここではまず簡単にワクチンの種類について説明したいと思います。
まず、5種混合ワクチンを基本として考えて見ましょう。「5種」とは次の5種類のウイルス病を指します。

 

1.ジステンパーウイルス感染症
2.アデノウイルス I 型感染症(犬伝染性肝炎)
3.アデノウイルス II 型感染症
4.パラインフルエンザ感染症
5.パルボウイルス感染症

 

この中で、ジステンパーと伝染性肝炎、パルボウイルス感染症は特に重症度が高く、子犬では感染により死亡することも珍しくないため、「コアウイルス」として非常に重要になります。アデノにはI型とII型がありますが、実際には片方のワクチンで2種類の病気が予防できるので、通常はII型1種類が入っていますので、4種の成分で5種類の病気が予防できる、というのが5種混合ワクチンです。そして5種混合にコロナウイルスが追加されたものが6種混合ワクチンです。コロナウイルスは、単独感染ではそれ程重症にはなりませんが、パルボウイルスと重複感染すると、パルボによる致死率が上昇すると言われています。しかし、生後6週齢を過ぎた犬では殆ど感染せず、してもあまり大きな問題にはならないことが多いとも考えられています。

 

これら5種・6種のワクチンに「レプトスピラ感染症」のワクチンを追加したものが8種・9種・10種などの混合ワクチンです。レプトスピラ症には幾つかの種類(血清型)がありますが、どの血清型が何種類入っているかはワクチンメーカーにより異なっています。2017年12月現在、入手できるもっとも多価のワクチンは10種混合ワクチンで、これは6種のウイルス疾患と4種類の血清型のレプトスピラを予防できるワクチンです。

 

レプトスピラはウイルスではなく、スピロヘータ属というラセン菌の一種で、ネズミやモグラその他の野生動物から犬やヒトに感染します。人畜共通感染症のため、盲導犬や介助犬など一般のヒトと接触する機会の多いアシスタントドッグでは、9種以上の混合ワクチンの接種が推奨されます。また、猟犬や、頻繁に野外に連れ出す機会の多い犬では、レプトスピラを含んだワクチンを接種する必要性が高くなります。

 

当院ではこれまで㈱微生物化学研究所(京都微研)の5種および11種ワクチンを使用しておりましたが、同社が犬・猫のワクチン製造から撤退したため現在はZoetis社の6種および10種ワクチンを採用しております(今後も諸般の事情により変更される場合がありますのでご了承ください)。6種と10種どちらのワクチンを接種するかは、その子の年齢(月齢)や生活環境などにより異なります。詳しくは病院スタッフ、獣医師にご相談ください。

 

▽ワクチン接種の必要性

ワクチンを接種しても、病気を100%防げるわけではありません。 しかしながら、パルボやジステンパーなど、感染すると死に至るかもしれないような怖い病気に対して、ワクチンを接種して免疫を高めておくことは決して無意味なことではありません。 これらの病気は特に、子犬での致死率が高く、若い犬では接種の必要性が高くなります。また、ワクチンを接種していない母犬から生まれた子犬は、母乳からこれらの病気に対する「移行抗体」をもらうことが出来ないため、パルボやジステンパー、その他の感染症に罹る危険性が高くなります。

 

特定の地域や集団内でのワクチン接種率が高いと、病気に対する集団全体としての抵抗力が強くなり、たとえその集団内に「ワクチン未接種の子犬」などの「感受性の高い個体」がいたとしても、病気に感染する確立が低くなると言われています。これを「集団免疫」と言います。つまり、ワクチンを接種するということは自分自身の身を守るだけではなく、間接的に「抵抗力の弱い」身近な子犬達を病気から守ることにも繋がるのです。

このように、ワクチンは適切に接種することが大切です。

 

 

 

▽ワクチン接種プログラム

生まれたばかりの仔犬は、免疫系が未発達なので、自分で免疫抗体を作ることができません。抗体を作れるようになるまでは、母親の初乳に含まれていた移行抗体という免疫抗体によって様々な病気から守られています。この移行抗体は、生後約5週間目くらいから徐々に減少し始め、12~14週間目くらいでほぼ消滅します。

 

この時期、仔犬も徐々に自分で抗体を作れるようになって来ますが、移行抗体は減少するため感染を防御する能力も次第に弱くなってきます。従ってこの時期に最初のワクチンを接種する必要があるのですが(「ワクチンを打つ」ということは、「自分で抗体を作らせる」ということです)、ここで問題が一つあります。移行抗体が仔犬の体に残っていると、ワクチンを接種しても、きちんと抗体を作ることができません。ですから、この期間、病気から仔犬を守り、最終的に、ワクチンによってしっかりと抗体が作られるようにしなければなりません。そのためには、移行抗体が減少し始める5週目くらいから完全に無くなってしまう14週目までの間に数回に渡ってワクチンを接種するのが最も効果的です。

 

このようにして考えられたワクチンの打ち方(いつから、どのくらいの間隔で、何回打てばよいか)を、ワクチン接種プログラムといいます。ワクチン接種プログラムには、仔犬の生活環境やワクチンの種類などによりいくつかの方法がありますが、次のようなプログラムで接種します。

 

1. 生後2カ月目(約8~9週)と3カ月目(12~14週)にそれぞれ1回づつの計2回接種
2. 生後6週目と9週目、更に12~14週目に1回ずつの計3回接種

 

そして、次の年からは、1年に1回づつ接種するのが理想的です。 初年度のワクチネーション・プログラムにより得られた免疫は、約1年間効果が持続しますが、時間がたつと次第に効果が落ちてきます(抗体価が下がる)。1年に1回ワクチンを追加接種することにより、下がってきた抗体価を再び上昇させ、感染に対する免疫力を高めることができます。これをブースター効果と言います。
レプトスピラ感染症の発生地域付近に済んでいる場合や、夏休み・お正月などに「発生地域」に旅行・帰省するような場合には、出来れば半年に1回、レプトスピラのワクチンを接種することをお勧めします(レプトスピラ単独のワクチンは通常在庫していないこともありますので事前にご確認下さい)。

 

初年度のワクチネーション・プログラムの最後のワクチン接種(12~14週目)後1~2週間(免疫の効果が出始める)は、感染の危険性のあるような場所(屋外や犬の集まる所など)に連れ出したり、他の成犬と接触させたりしないようにすることが大切です。

 

▽ワクチン接種後の注意

ワクチン接種後に何らかの副反応が出る場合があります。ワクチン接種後の反応としては、注射した局部の腫れやしこりなどの他、顔が腫れたり、急に元気が無くなったり、虚脱してショック状態になることもあります。「アナフィラキシー」という非常に強いアレルギー反応を起こした場合には、非常に稀ではありますが、命に関わる危険性も出て来ます。今まで何でも無かったからこれからも大丈夫、と言い切れるものではありません。

 

急性の強いアレルギー反応は通常、接種後短時間(30分~数時間程度)で発生することが多いため、病院でワクチンを接種した後は、できれば1時間くらい病院内で様子を見てから帰宅されることをお勧めします。したがって、夕方接種して夜間に具合が悪くなるという状況を避けるため、可能な場合は出来るだけ午前中にワクチンを接種することをお勧めしています。また、ワクチンを接種した日はあまり興奮させたり、激しい運動をさせないように注意してください。万が一、様子がおかしい時はすぐに病院に連絡してください。