ブログ・コラム|大田区の動物病院なら、動物病院エル・ファーロ

  • 大田区・動物病院エル・ファーロ・電話
  • 大田区・動物病院エル・ファーロ・メニュー

ノミ、マダニの予防と対策

2017.11.02(木)

▽ノミの被害と生活環

ノミと一口に言っても、実は幾つかの種類があります。基本的には、イヌノミは犬に寄生し、ネコノミは猫に寄生し、人にはヒトノミが寄生する、と考えられていました。ところが数年前の調査により、ネコノミは猫のみならず犬や人などにも寄生することが知られるようになり、犬や猫などのペットに寄生しているノミの多くが、実は「ネコノミ」であるということが判明しています。
ノミによる被害としては、まず吸血による皮膚炎が挙げられます。ノミに刺されると、非常に強い痒みが生じます。またノミに対してアレルギーを持っている場合には、刺された部位だけではなく全身に痒みが生じる場合もあり、少数の寄生でも非常に重い症状が現れることも珍しくありません。激しい痒みのために皮膚を掻き壊して出血したり、睡眠不足になったりする可能性もあります。犬や猫に寄生したノミ(特にネコノミ)がヒトにも一時的に寄生して被害をもたらすこともあります。また、ノミは条虫(サナダムシ)を媒介することでも良く知られています。動物の糞便に混じって環境中に排泄された条虫の卵は、ノミの幼虫に食べられます。条虫の幼生を体内に宿したまま、やがて成虫になったノミは犬や猫の皮膚に寄生し、痒みのために動物が皮膚を舐めたり齧ったりした拍子に口から飲み込まれてしまいます。飲み込まれたノミの体は胃の中で消化されてしまいますが、条虫はそのまま動物の小腸に寄生して成長する、というのが条虫のライフサイクルです。つまり、条虫が寄生していたら必ずノミがいる(いた)ということになります。
ノミの成虫は寄生している動物の体表で産卵しますが、卵は外界に落下して孵化します。したがって、動物の寝床などが「ノミの巣」になっていることがよくあります。ノミの幼虫は主に成虫の糞を食べて大きくなり、やがて蛹から成虫になって、再び犬や猫に寄生します。

 

▽ノミの予防と対策

ノミの生活環を見ても判るように、ノミを駆除するためには動物の体表についた成虫を駆除するだけでは不十分です。すでにノミが多数寄生しているような場合は、その動物の寝床にはノミの幼虫や蛹が大量に生息している可能性が高いので、ノミ取りシャンプーや成虫駆除剤では一時的な効果しかなく、まして「ノミ取りグシ」で1匹1匹捕まえても殆ど意味がありません。
ノミの場合も、被害に合ってから慌てて対策を考えるよりも、予防する方がずっと楽でもあり、重要なことです。ノミの予防薬は「成虫駆虫薬」と「繁殖予防薬」に分けることができます。成虫駆虫薬は字のとおり、寄生した成虫を駆除する薬で、皮膚に滴下するスポットタイプのものなどが一般的です。繁殖予防薬というのはノミの卵が孵らないようにする薬のことで、これには飲み薬のタイプと、スポットタイプの成虫駆虫薬と合剤になっているものものがあります。合剤になっているものは、成虫の駆除と繁殖予防が同時にできます。すでにノミの被害が発生している場合には、成虫駆虫薬と繁殖予防薬を併用するとともに、環境中の幼虫や卵を駆除する必要があります。ノミは湿度の高い環境を好むので、風通しを良くして乾燥させることが大切です。また動物が寝床として使用していたタオルや毛布などを新しいものに取り替えたり、スプレー式のノミ駆除剤やバルサンなどの殺虫剤を使用することもある程度有効でしょう。
ノミは既にノミを持っている動物と接触したり、ノミに汚染された環境に立ち入ることで感染しますが、完全室内飼育だからと言って安心することはできません。全く予防をしていない場合には、ほんの少数の寄生が甚大な被害に拡大する危険性もあります。特に梅雨時から夏場の高温多湿の時期は、しっかりノミの予防をすることが大切です。

 

▽マダニの被害と対策

ノミに次いで重要な外部寄生虫がマダニです。マダニは犬や猫などの皮膚に寄生し、頭の一部を皮膚の中に突っ込んだ状態で吸血します。血液を一杯に吸い込んだマダニは、直径が1cmくらいになることもあり、放っておくとやがて落下して野外で産卵します。草むらで孵化したマダニの子供は丈の高い草に登りながら成長し、徐々に草の先端に移動します。そして犬や猫、ヒトなどが傍を通りかかったときにその体表に移動して寄生します。
マダニの被害としては、大量寄生により貧血を起こしたり、ある種のウイルスやリケッチア、血液寄生性原虫などの病原体を媒介することもあります。また動物が掻いたり舐めたりした拍子に皮膚に食い付いていたマダニの胴体が取れてしまい、頭部だけが皮膚の中に残って化膿する場合もあります。慣れない人が、動物の皮膚に寄生してるマダニを見つけて「もぎ取る」と、これと同じことが起きて化膿する場合があるので、マダニを見つけたときには動物病院で取ってもらうことをお勧めします。
マダニの駆虫・予防はノミの対策と同様、皮膚に滴下するスポットタイプの薬剤が一般的です。ノミの成虫駆虫薬の中にはマダニを同時に駆除できるものもありますので、特に野外に出る機会の多い犬や猫ではしっかり予防することが大切です。