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CASE-4 犬の爪剥離

2017.11.01(水)

犬の爪の剥離はときおり遭遇する疾患である。爪切を怠って長いままの状態にしておいたり、あるいは散歩や屋外での運動の際などに引っ掛けて爪が「取れてしまう」ことがある。

左の写真はG.レトリバー(雌 10歳)の前肢の爪1本が「スッポリ」と取れてしまったところである。本来なら爪の角質に保護されている、血管や神経を含んだ軟部組織が露出して、真っ赤になっている。この部分に少しでも触れると、非常に強い痛みを生じる。

このようなときには、もちろん消毒などをしてはいけないが、水道水であまり熱心に洗っても痛みを加えるだけなので、ぬるま湯で軽く流すだけにして、ラテックスグローブにハイドロジェル材(出血のある場合にはアルギン酸)を少量充填して、そのまま肢にすっぽり被せて抜けないように固定する。これで乾燥を防いでやると、翌日には痛みが殆ど消失している。

 

翌日からは、患部に触れてもあまり痛がらなくなり、ほぼ普通に歩けるようになった。
ポリウレタンフォーム(ハイドロサイト)で 指ごと挟むようにして、テーピングなどで固定した。

これを1~2日ごとに交換。

ハイドロサイトだとクッション性があるので、ぶつかったり当たったりしても痛みを生じない、と言う利点がある。

 

数日経過すると、爪が抜けて「真っ赤」だった部分の周囲をピン色の組織が覆うようになった。

この「薄ピンク色」の組織が、いわゆる「肉芽組織」なのか、あるいは爪の元となる上皮細胞なのか?不明である。

通常このような傷では、爪の剥がれた後の組織は「乾燥」して黒く壊死してしまい、干からびて「ミイラ状」になってしまう。その後から新たに爪が生えてくる、と言う経過を取るのが普通である。

ところが、「湿潤療法」で治療した場合には、「壊死」は起こらず、残存した組織が再び爪へと再生する。

 

ハイドロサイトによる被覆を終了し、指サックの先端にハイドロジェルを入れて患部の指を覆い、バンデージで抜けないように固定した。

「薄ピンク色」の組織は徐々に白っぽく、硬く変化してきた。

2~3週間程度で、ほぼ元通りの爪に戻った。