ブログ・コラム|大田区の動物病院なら、動物病院エル・ファーロ

  • 大田区・動物病院エル・ファーロ・電話
  • 大田区・動物病院エル・ファーロ・メニュー

手術後の縫合創の管理について

2017.11.02(木)

手術の際には通常、最後に皮膚を縫合します。普通はナイロン糸などの「非吸収性・モノフィラメント」の糸を使用しますが、ステープラー(皮膚縫合用ホチキス)などを使用する場合もあります。
一昔前までは、縫合した術創を毎日イソジンなどの消毒液で消毒する、というのが「常識」でしたが、現在はそのような行為には意味が無いということが判っており、退院後に毎日傷口の消毒をして頂く、などということはありません。むしろ、消毒をすると傷の治りが遅れる可能性があるため、縫合した術創の消毒は「してはいけない」というのが現在の常識です。

 

動物の場合は、縫合創を舐めたり齧ったり、引っかいたりして、縫った皮膚が開いていしまったり糸が取れてしまったりすることがあります。このような事態を防ぐため、術後数日間はエリザベスカラーや腹帯(術後衣)などを利用して、傷を舐められないようにするなどの必要があります。しかし、術創をそれ程気にしない動物の場合には、軽く包帯を巻いたり、T-シャツなどを着せて傷を直接舐めないようにするだけで充分なこともあります。

 

ナイロン糸やステープラーで皮膚を縫合した場合には、一般的な手術なら術後1週間から10日で抜糸ができます。退院から抜糸までの間は、特に家でしていただくことはありませんが、舐めたりしないように充分注意していただく必要があります。不妊・去勢などの手術では、術後に全力疾走で走り回ったり転げまわったりしない限り、必要以上の「安静」は必要ありません(もちろん手術の内容によって安静が必要な場合もあります。個々の手術により術後の注意事項が異なりますので、その都度詳しくご説明します)。

 

下の写真は、当院で行った犬の不妊手術の術創管理の様子です。当院では犬の不妊手術などの閉腹の際には、写真1のように「吸収性・モノフィラメント」を使用して連続真皮縫合を行うことが多く、皮膚の縫合はしません。開腹手術などの「テンション」がかからない部分の縫合の場合には、この方法を適応することができます。この縫合創にフィルムドレッシングを被覆したのが写真2です。フィルムドレッシングは非常に薄いため、写真ではちょっと判り難いかもしれません。この犬の場合には、エリザベスカラーはせずに、家で洋服を着せて傷を直接舐めないようにしてもらいました。特に包帯も巻いていません。

 


写真1


写真2

 

写真3は術後3日目の写真です。フィルムの下に滲み出た血液で少し茶色くなっていますが、特に問題はありません。フィルムをはがしたのが写真4です。皮膚を縫合していないため抜糸が不要で、フィルムを使用しているため「カサブタ」ができず、傷が非常にきれいにくっついているのがお分かりになると思います。


写真3

写真4

 

術創はフィルム材で保護されていますので、自宅で傷を消毒する必要もなく、3日経ったらフィルムを剥がして終わり、という非常に簡単な術後管理方法です。また、腹壁・皮下組織・真皮の全てを吸収糸で縫合しているため、最終的には術創内部に「糸=異物」が一切残りません。

 

▽注意点

消化管吻合や子宮蓄膿症、細菌性の腹膜炎など、汚染・感染を伴う手術では、上記のような閉鎖方法ができない場合があります。実際にどのような方法で縫合・閉鎖するかは手術毎に獣医師が最善と思われる方法を選択することになります。