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2007.01.22(月)

以前「中毒…」のところでも触れたことのある「キシリトールの毒性」の話ですが、アメリカの獣医専門雑誌「Veterinary Medicine」の2006年12月号に「犬に対するキシリトールの影響に関する新情報」が掲載されましたので、重要な点だけを抜粋して紹介したいと思います。

 

 

「キシリトール」について

・ キシリトールはヨーロッパ(特にフィンランド、ノルウェイ、ロシア)および日本で一般的な甘味料であり、アメリカでもこの数年でその使用が急激に増加している。
・ キシリトールの摂取は、人では比較的安全性が高いと考えられるが、犬では、摂取により時に命に関わるような重篤な症状を引き起こすことがある。
・ キシリトールの投与が、犬で低血糖を引き起こすことは約40年前から知られていた。しかし最近の研究で、キシリトールの摂取が急性の肝壊死を引き起こすことが判った。

 

「キシリトールの歴史など」

・ キシリトールは1891年に、ドイツの化学者であるEmil Fisherにより発見された。
・ キシリトールは、イチゴ類やレタス、きのこ類など普通の食物にも含まれている。
・ キシリトールはサッカロース(ショ糖)と同じくらい甘みがあり、カロリーは約2/3である。
・ 人ではインスリンの分泌を殆ど刺激しないため、低炭水化物食を要する人達や、食品中のグリセミック・インデックスが気になる人達のための代用品として優れていると考えられている。
・ キシリトールは特定の細菌の増殖を防ぐことが知られており、子供の細菌性内耳炎の予防に使用されている。また、口腔内の細菌が酸を作り出して歯の表面にダメージを与えるのを抑制することで、虫歯予防の目的でも使用される。このため、無糖ガムや歯磨き粉、その他の口腔ケア製品に多く含まれるようになってきた。

 

「キシリトールの代謝」

・経口投与されたキシリトールの吸収性は、動物種によって大きく異なる。ヒトとラットでは、ゆっくりと吸収される(だからこそ糖アルコールの過剰摂取により浸透圧性下痢のリスクが高くなる)。ヒトでは口から摂取したキシリトールの49~95%が吸収される。
・ 一方、犬では口から摂取したキシリトールは、急速に、ほぼ完全に吸収される。血漿中の濃度のピークは摂取後約30分である。

 

「キシリトールの毒性と症状」

・ 多くの動物種において、キシリトールの経口摂取における安全域は広い。マウスにおける経口摂取でのLD50は20g/kg以上である。
・ ヒトでは、キシリトールを1日あたり130g以上摂取すると下痢を起こすと言われているが、それ以外の異常は見られない。かし、これは犬では全く異なる

 

●最初に見つかった副作用

・ 1960年代の実験。犬にキシリトールを静脈投与した場合に、同量のグルコースを投与した場合よりも多くのインスリン分泌を引き起こし、同時に血糖値の低下をも引き起こすことが判った。
・ ある研究では、犬に体重1kgあたり1gのキシリトールを経口投与した場合の血中インスリン濃度のピークは、同量のグルコースを投与したときの約6倍であった。
・ グルコースの投与後は血糖値が上昇するのに対し、キシリトールの投与後は急速に血糖値が低下し、約1時間で50mg/dl以下にまで低下した。
・ APCCは、犬で体重1kgあたり0.1g以上のキシリトールを摂取した場合には低血糖を生じる危険性がある、としている。
・ キシリトール摂取後に通常最初に見られる症状は「嘔吐」である。低血糖は通常30~60分以内に見られるが、キシリトール・ガムを摂取した症例では低血糖の症状発現までの時間が12時間まで延長したものもある(ASPCA APCC Database 2003-2006)。症状は次第に嗜眠、運動失調、虚脱、痙攣発作へと進行する。
・ キシリトールの血糖値に対する影響は動物種によって異なる。ヒト、ラット、馬およびアカゲザルでは、キシリトールを静脈投与しても血中インスリンは殆ど~全く上昇せず、血糖値にも影響がない。これに対して、牛、山羊、ウサギ、ヒヒではキシリトールの静脈投与により多量のインスリンが分泌される。猫、フェレットではよく解っていない。

 

●「新たに判明した副作用」

 

・ 最近、ASPCA APCCはキシリトール摂取後12~24時間以内に肝酵素の活性が上昇した犬の事例を幾つか報告した。これらの犬の中には、キシリトール摂取の後、急性肝不全を引き起こしたものもいた。
・ 「警告文;犬にこれらのお菓子を与えないで!」参照;これら8頭のうち6頭では、肝不全の発症前に低血糖が見られなかった。しかし、嗜眠や嘔吐は9~72時間以内に見られている。
・ これらの犬ではまた凝固不全による血液凝固時間の延長、点状出血、斑状出血、消化管内出血が見られた。
・ 血液化学検査ではALT値の上昇、軽度~中程度の高ビリルビン血症、凝固時間の重度な延長などが見られた。また軽度~中程度の血小板減少症やALP値の軽度の上昇、中程度の低血糖が見られた。
・ また、軽度~中程度の高リン血症が見られた。「高リン血症」は予後不良の指標である
・ 8頭のうち5頭で安楽死、もしくは死亡が認められた。うち3頭で病理解剖が行われた;2頭で重篤な肝壊死が認められた。
・ 現時点では、犬で肝不全を引き起こすキシリトールの容量は、低く見積もっても0.5g/kgとされている(ASPCA APCCDatabase: Published data,2003-2006)。しかし現時点で、この反応が容量依存性のものなのか、特異体質によるものかと言うことは、はっきりしていない。

 

「キシリトール以外の甘味料について」

・ ソルビトールやマンニトールなどの糖アルコールは、犬に対して血糖値やインスリンの分泌に殆ど(あるいは全く)影響を与えないが、過剰摂取により浸透圧性の下痢を起こす可能性はある。
・ ショ糖やアスパルテーム、スクラロースなどの人口甘味料は一般的に安全であり、もしも大量に摂取したとしても特に疾患を引き起こすことはない、と言われている。

 

「治療」

・ (省略)

2006.11.30(木)

読売新聞 <http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061128i303.htm?from=main3>

 

《以下引用》

 「細胞を活性化させ、心に安らぎをもたらす」「たばこや排ガスを浄化し、空気をきれいに保つ」――。こんな「マイナスイオン」効果をうたったインターネット広告に、科学的根拠がないものが含まれているとして、東京都は7業者に対し、景品表示法を守るよう指導した。

 マイナスイオン商品は数年前から、健康志向に乗って市場を拡大。都は表示に問題がありそうな布団やネックレス、空気清浄器など8商品を選び、業者に資料の提出を求めた。

 業者側は「材料のトルマリンからマイナスイオンが発生する」などと説明したが、都で分析したところ、商品の仕組みと合致しない実験データを示していたり、ネット上で見つけた数値を根拠なく引用したりしていて、広告内容には裏付けのないことが判明。都は27日に文書で指導した。

 こうした商品の中には数十万円もするものもあり、都消費生活総合センターなどには昨年度までの5年間で計400件の相談があった。都は「科学的な説明に見えても、うのみにしないで」と呼びかけている。

(2006年11月28日11時10分 読売新聞)

 

《コメント》

「いまさら・・・。」という感がないでもありませんが、残念なことに、いまだに「マイナスイオン」を売りにしている商品が巷に溢れているのが事実です。「ニセ科学シンポジウム」のところでも書きましたが、「水」という物質を専門的に研究している物理学者でさえ、「マイナスイオンとは何か」と言うことについて、「まだきちんと定義されていない」と言っています。「マイナスイオンとは何か?」ということが、まだ判っていないのです。マイナスイオン関連製品の売り文句の中には、「陰イオン」と混同しているような記述もたくさん見られます。「負に帯電した水滴がたくさんある」=マイナスイオンが豊富、という訳の解らない記述もよくあります。滝のそばなど、細かい水滴=霧の多い場所が「カラダに良い」とすれば、それは湿度のためであって「マイナスイオン」を持ち出す必要はありません。空気中のゴミなども、水滴により地面に落ちるため、空気が綺麗になるかもしれませんが、これも「マイナスイオン」とは無関係です。滝や噴水、加湿器によっては、セラチア菌やレジオネラ菌などで汚染された水が霧状に漂っているような場合には、むしろ危険性が高まることもあります。

「マイナスイオン」の定義が科学的にはっきりしない以上、これが「カラダに良い」とか「健康に良い」などという、信憑性のある報告というのは「無い」ということになりますが、これを差し引いて考えても、「体験談」の域を出るものは見当たりません。
因みに、以前にここでも紹介した「誇大広告を見破るための9か条国立健康・栄養研究所)にもありますが、「体験談」ばかり載っているような健康食品の類は、それだけで「怪しい」と思った方が安全です。

これに良く似た「水」モノで、最近はやりの水に「活性水素水」と呼ばれているものがあります。「活性水素水」に関しては「こちら」をご覧下さい。
アルカリイオン水」とか 「活性水素水」とか、 とかく日本では様々な怪しげな「水商売」が成り立っています。水の結晶のことを書いた「疑似科学」の本が話題になったこともありますが、かなり大きな社会問題として捉えるべき「大問題」ですが、何故かいまだに学校などで子供たちに配られているそうです・・・子供たちの未来がとても心配です。

2006.11.16(木)

時事通信社 2006/11/16-21:48

<以下引用>

 

男性が狂犬病で重体=フィリピンでかまれ感染-国内の発症は70年以来・厚労省

厚生労働省は16日、京都市在住の60代の男性がフィリピンで犬にかまれ、狂犬病を発症したと発表した。男性は重体。国内で人が狂犬病を発症したのは、1970年にネパールで感染した日本人男性が帰国後に発症して以来。
厚労省は同日、都道府県や旅行業界団体に対し、狂犬病の流行地域への渡航者に注意を呼び掛けるとともに、万が一動物にかまれた場合はすぐにワクチンを接種するよう通知した。
また、臓器移植などの例外を除き、人から人への感染をすることはなく、同省は「男性から感染が拡大する恐れはない」(結核感染症課)としている。

 

<コメント>

日本に住んでいると、狂犬病など過去の病気だ、と考えてしまいがちです。しかし世界では、狂犬病はいまだに非常にありふれた感染症です。狂犬病の清浄地域(非発生地域)とされているのは、日本の他にはイングランドやニュージーランド、シンガポール、ハワイなど、世界でもごく限られた11地域だけです。

海外に行ったら、絶対に野犬には触ってはいけません。犬だけではなく、野生動物からも狂犬病は感染しますので、自分の命が惜しい人は、無闇に動物に触らないようにしましょう。もしも万が一動物に咬まれたら、狂犬病に感染した可能性が高いと判断してすぐに病院で見てもらうことをお勧めします。

2005.12.23(金)

クリスマス、お正月と楽しいイベントが続く時期です。この時期は人間の方も食べ過ぎ・飲み過ぎで体調を崩すことがありますが、動物達も決して例外ではありません。浮かれてしまったり気が緩んでしまったりするせいか、ついつい普段は与えないような「ご馳走」をたくさん与えてしまうことがよくあります。クリスマスケーキを「ほんの一口」と言いつつ二口、三口と与えてしまったり、お節料理のおすそ分けをしてしまったり…。もちろん大事に至らないケースもありますが、時にはお腹を壊して下痢や嘔吐・食欲不振などを引き起こしてしまう場合もあります。そんなときに限って病院がお正月休み…などと言うことにならないように、あまりいつもと変わったものを与えるのは控えるようにしてください。
「前編」では、私たち人間が「安全」だと思って日常的に摂取している「食べ物」や「飲み物」が、動物では時として危険なことがある、と言うことを紹介しましたが、今回もその続きです。

 

人間にとっては安全な食物でありながら、犬や猫などの動物に与えてはならないものの代表としては、「タマネギ」が有名です。タマネギはAllium(ネギ属)に含まれますが、その他にもガーリック、長ネギ、ラッキョウ、韮(ニラ)、チャイブ(西洋浅葱)などがAllium属に含まれます。アメリカの獣医学専門誌に掲載されたある報告(.pdf)によると、タマネギだけではなく全てのAllium属の植物が、犬や猫たちにとって同様に危険である、とされています。タマネギその他のAllium属には数種類の「有機チオ硫酸化合物」と言う酸化物質が含まれており、これを摂取することによって赤血球の細胞膜が損傷を受け、溶血性貧血を引き起こします。重度の貧血では急性腎不全などを併発して死亡することもあるので充分注意する必要があります。この物質は加熱調理しても変化しないため、すき焼きやカレーライスなど過熱したものでも中毒を起こします。またよくある勘違いとして、「タマネギだけ除ければ大丈夫だろう」と考えて、一緒に調理した肉や他の野菜などを与えてしまい、中毒になることもあります。同じ皿で調理されたものは全て、与えるべきではありません。

 

アボカドが兎やげっ歯類、鳥類に対して毒性が高いと言うのは比較的知られているのではないかと思いますが、同様に犬や猫、フェレットなどに対しても毒性を示すことがある、と言う報告があります。アメリカのASPCAAnimal Poison Control Center(動物の中毒管理センター)によれば、アボカドの果実、種、葉などにはペルジン(persin)と呼ばれる中毒物質が含まれており、人に対しては毒性を示すことは無いようですが、犬や猫がこれを摂取することで嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こす可能性がある、と言うことです。鳥やげっ歯類ではさらに感受性が高く、呼吸困難や全身性のうっ血を引き起こして死亡してしまうこともあります。従って、人以外の動物にアボカドを与えるのはやめたほうが良いでしょう。

 

キシリトールはキシリットともいわれ、俗に「ショ糖やグルコースと比べて虫歯になりにくい」、「低カロリーで血糖値上昇抑制効果を持つ」などといわれている甘味料の一種です。ヒトでの有効性については、「虫歯の原因になりにくい」、「歯を丈夫で健康にする食品」として、キシリトールを関与成分とした特定保健用食品が許可されています。一般に「健康によい」と言うイメージを持つキシリトールですが、ASPCA Animal Poison Control Centerの報告によれば、犬が誤って比較的大量に摂取した場合には、急激な低血糖を起こして意識レベルの低下や痙攣などの神経症状を引き起こし、重度な場合には命に関わる可能性もある、とのことで、キシリトールを含んだガムやキャンディーなどを犬が届かないところに保管するように注意を喚起しています。実際にはキシリトールを含んだ犬用のガムなども売られていますが、必要以上に大量に与えるのは「安全」とは言えない可能性もあります。因みにヒトの場合でも、キシリトールを一度に30~40g摂取すると、下痢などの消化器症状や腹痛などを起こすことが知られています。

 

一般食品ではありませんが、ビタミン剤やサプリメントなども注意が必要です。これらはどこの家庭でもよく見かけるものですし、「健康によいだろう」と考えて、犬や猫などの動物に日常的に与えているケースも多いのではないかと思われます。ビタミンB群やビタミンCなどの「水溶性ビタミン」は過剰に摂取しても尿から排泄されてしまうため、それ程気にする必要はありません(但しビタミンCの過剰症では膀胱のシュウ酸結石が見られることがあります)。しかしビタミンA、D、Kなどの「脂溶性ビタミン」は体内に蓄積してしまうため、多量に摂取すると過剰症を引き起こして様々な障害をもたらす可能性があります。特にDを含むビタミン剤とカルシウム剤を同時に大量に摂取した場合、重度の高カルシウム血症を引き起こして命に関わるケースもあります。実際には、バランスの取れた適正なフードをきちんと与えていれば、一般的にビタミンやサプリメントを添加する必要は基本的にはないはずです。病気の治療のためにある種のビタミン剤などを服用している場合には、不用意にサプリメントを与えると危険な場合もありますので、内容成分をよく確認し、同時に与えても大丈夫かどうか、掛かりつけの動物病院でよく相談されることをお勧めします。
(→ 関連記事;診療日記

2005.12.01(木)

数年前のことになりますが、私の勤務していた病院に、ある犬の飼い主の方から質問の電話がかかって来ました。お話を伺ってみると、その方の犬が何とか言う「お茶」を葉っぱごと一袋全部食べてしまい、その後痙攣などの神経症状を起こして亡くなってしまった、と言うことでした。人間が普段、何の問題も無く(むしろ健康に良い、と思って)飲んでいる「お茶」を食べたことが原因で、本当にこのようなことが起こるのでしょうか?というのがそのときの質問でした。お茶にも色々な種類があり、私自身もそれらひとつひとつのお茶の成分やその含有量などに関して詳しいわけではありませんが、一般的な回答として以下のように答えた記憶がありあます。

 

「大抵のお茶と言うのは普通、カフェインやテオブロミンなどの成分が含まれていますし、ハーブティなどにはそれ以外にも様々な薬用成分が含まれていることが知られています。それぞれのお茶に適した方法で飲用に供する場合には、これらの成分が毒性を示すことは殆どありませんが、『お茶の葉をそのまま食べてしまう』とか、『煮出してはいけないお茶を煮出して飲む』とか、指定された用法以外の方法で摂取した場合には、有害な作用を示す可能性を否定することは出来ません。しかも人間に比べて、犬のほうがカフェインなどに対する感受性は高いと考えられますので、何十杯分ものお茶の葉を大量に食べてしまったと言う場合には、これらの物質による中毒を起こして、場合によっては死亡してしまうことも考えられないことではありません。」

 

電話による質問でしたので確定的なことは言えませんが、お茶に含まれる成分による中毒の可能性は充分あると思われました。このように、一般的には安全(あるいは体によい)と思われているものでも、摂取の方法や量、あるいは摂取する動物の感受性によっては危険なこともあります。「毒物・中毒物質」と言うと、医薬品や家庭内の洗剤類、殺虫剤や除草剤、タバコやアルコール類などを直ぐに思い浮かべるのが普通だと思いますが、今回はこのような「明らかに危険なもの」ではなく、一見すると安全そうなものの中から中毒を起こす可能性のある「意外なもの」を幾つか紹介したいと思います。

 

アメリカのASPCA Animal Poison Control Center(動物の中毒管理センター)は、2003年4月から2004年4月までの間に「ブドウおよびレーズン」を摂取したと言う犬の報告を140例受けており、そのうち50例では嘔吐や腎不全などの症状を示し、うち7例が死亡したと報告しています。実際にはブドウ・レーズンに含まれる何と言う成分が、犬に対して毒性(主に腎毒性)を示しているのか、と言うことは判っていませんが、現段階では犬に対してブドウやレーズンを与えることは避けるべきである、と警告しています。

 

また同様に Animal Poison Control Centerによって報告されたマカダミア・ナッツに関連した中毒は、1987年から2001年までの間に48件あったそうです。人では、マカダミア・ナッツによるアレルギー・ショックが報告されているそうですが、犬の場合の症状は嘔吐や虚脱、沈うつ、運動失調、高体温などで、人の場合の症状とは異なっています。この場合も、本当の原因物質はまだ特定されていませんが、やはり犬にマカダミア・ナッツを与えるのはやめたほうが良いでしょう。(→マカダミア・ナッツ中毒pdf.)

 

漢方薬や生薬などは「副作用が無く安全」などと考えがちですが、実は必ずしもそうではありません。例えば、マオウ(麻黄)と言うのは気管支拡張剤であるエフェドリンの原料で、漢方薬などには普通に含まれている成分ですが、多量に摂取すると興奮、痙攣、幻覚、心拍・血圧上昇などの症状を引き起こすことが知られています。また朝鮮人参に含まれるサポニンと言う成分には、血糖値やコレステロール値を下げたり、血圧や造血作用を刺激する働きがあると考えられていますが、かなり大量に摂取した場合には中毒を起こす可能性があると考えられています。(→マオウの危険性に関してはこちらpdf.)

 

普段何気なく庭先や部屋などに飾っている観葉植物の中には、食べると非常に危険な毒物を含んでいるものが沢山あります。これからクリスマスの時期になると良く見掛けるようになるのがポインセチアです。あの緑と赤のコントラストがまさに「クリスマス」の雰囲気を醸し出すので、非常に人気のある観葉植物です。ポインセチアは、以前考えられていたほどには強力な毒性は持たない、と言うことが最近の研究で判ってきたようですが、一株まるまる食べてしまうようなケースでは、下痢や嘔吐、咽喉頭や食道の炎症を引き起こす可能性があります。また小型犬や子犬などでは、少量でも中毒を起こす可能性は否定できませんので、充分注意する必要があるでしょう。クロガネモチはナンテンに似た赤い実をつける植物で、英語ではHollyなどとも呼ばれ、やはりクリスマスの時期に良く見掛ける植物のひとつですが、この実と葉にはイリシンと呼ばれる物質の他、カフェインやテオブロミンなどの成分が含まれており、大量に摂取した場合には中毒を引き起こします。

 

このように、私たちが普段何気なく食べたり、飲んだり、身の回りに飾ったりしている「一見何の危険性もなさそう」なものが、犬や猫たちにとっては危険を及ぼす可能性のある物質であることも珍しくありません。思わぬ事故を起こさないように充分注意して、小さな命を守ってあげてください。

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