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2017.11.01(水)

▽ワクチンの種類

猫のワクチンは「3種混合」が主流でしたが、最近では4種、5種というものが出ています。3種混合ワクチンには以下の病気に対するワクチンが含まれています。

 

1.猫伝染性鼻気管炎(FVR)
2.猫カリシウイルス感染症(FCV)
3.猫汎白血球減少症(猫パルボ;FPV)

 

この3種を中心として、猫白血病ウイルス(FeLV)のワクチンを追加したものが4種混合、さらにクラミジアのワクチンを追加したものが5種混合になります。FeLVのワクチンはそれだけ単独のものがありますが、クラミジア単独のワクチンは現在のところ日本にはありません。

また2008年7月より猫エイズウイルス(FIV)感染症に対するワクチンが接種可能になりました。ただし、当院では現在のところ性急な導入を見合わせております。

 

▽ワクチン接種の必要性

FVRやFCVは屋外の猫では非常に頻繁に見られるウイルス感染症です。FVRは激しい鼻炎や気管支炎、結膜炎、角膜炎を引き起こします。子猫ではこびり付いた目ヤニで目が開かなくなってしまったり、著しい角結膜炎のため瞼と眼球の角膜が癒着してしまうこともあります。FCVはFVRと似たような症状を示すものもありますが、口内炎や舌炎を起こすことで知られています。どちらもそれだけでは致死的ではありませんが、体力の無い子猫の場合には、脱水や栄養不良などを引き起こして死亡してしまう可能性もあります。これらのウイルスは感染力が非常に強く、一度感染すると慢性化することが多いため、ワクチンでしっかり予防することが大切です。

 

FPVは最近ではあまり見かけなくなりましたが、地域によってはまだ多くの発生が見られるところもあります。この感染症にかかると激しい嘔吐と水様性の下痢を起こし、白血球減少症を引き起こします。非常に死亡率の高い怖い病気なので、ワクチンで予防することが推奨されます。

 

完全室内飼育の猫でも、たまたま脱走してしまったり、外猫が室内に侵入してきたり、あるいは飼い主自身が外で感染猫に触ってウイルスを持ち込んでくることもあるため、決して感染の機会が無い、という訳ではありません。室内、屋外飼育を問わず、3種混合ワクチンは全ての猫で接種すべきである、と考えてよいでしょう。

 

FeLV;猫白血病ウイルスは、FeLVに感染した猫に噛まれたり、傷を舐め合ったりなどの濃厚接触をすることにより感染します。このウイルスに感染すると、白血球減少症を起こしたり、リンパ腫などの腫瘍性疾患を発症するリスクが高くなります。ワクチンを適切に接種することで感染率を減少させることができますが、このワクチンは(特に海外で)接種部位にしこりが出来たり、そのしこりが悪性腫瘍化するという副作用が報告されています。通常、動物のワクチンは背中の肩甲骨の間に接種するのが普通ですが、ここで悪性腫瘍が発生すると、手術により切除するのが非常に困難になってしまいます。そのため、FeLVワクチンを接種するときは背中ではなく、後ろ足や尻尾の先に注射することが推奨されています。これは、万が一接種部位に腫瘍が出来たとしても、後ろ足または尻尾を切除することでその猫の命を救うことができるからです。

※上記の「ワクチン接種部位肉腫」ですが、以前はFeLVワクチンや狂犬病ワクチンなどの不活化ワクチンのみで発生すると考えられておりましたが、猫では3種混合ワクチンをはじめあらゆる(ワクチン以外の)皮下注射でもこのような状況が生じる可能性がある、ということが判明してきており、そのため当院では3種混合ワクチンの場合も後肢の膝より遠位の皮下に接種するようにしています。

 

FeLVのワクチンは「屋外で飼育されており、よく喧嘩して来る」など、FeLVに感染する確立の高い猫にだけ、必要に応じて接種するのが最良の方法である、というのが当院の考え方です。

 

▽ワクチン接種プログラム

生まれたばかりの仔猫は、免疫系が未発達なので、自分で免疫抗体を作ることができません。抗体を作れるようになるまでは、母親の初乳に含まれていた移行抗体という免疫抗体によって様々な病気から守られています。この移行抗体は、生後約8週間目くらいから徐々に減少し始め、12~13週間目くらいでほぼ消滅します。

 

この時期、仔猫も徐々に自分で抗体を作れるようになって来ますが、移行抗体は減少するため感染を防御する能力も次第に弱くなってきます。従ってこの時期に最初のワクチンを接種する必要があるのですが(「ワクチンを打つ」ということは、「自分で抗体を作らせる」ということです)、ここで問題が一つあります。移行抗体が仔猫の体に残っていると、ワクチンを接種しても、きちんと抗体を作ることができません。ですから、この期間、病気から仔猫を守り、最終的に、ワクチンによってしっかりと抗体が作られるようにしなければなりません。そのためには、移行抗体が減少し始める8週目くらいから完全に無くなってしまう13週目までの間に数回にわたってワクチンを接種するのが最も効果的です。

 

このようにして考えられたワクチンの打ち方(いつから、どのくらいの間隔で、何回打てばよいか)を、ワクチネーション・プログラムといいます。 ワクチネーション・プログラムは、仔猫の生活環境やワクチンの種類などによりいくつかの方法がありますが、通常は、生後2カ月目(約8~9週)と3カ月目(12~13週)に1回づつの計2回接種する方法が一般的です。そして次の年からは、年に1回づつ接種するのが理想的です。

 

初年度のワクチネーション・プログラムにより得られた免疫は、約1年間効果が持続しますが、時間がたつと次第に効果が落ちてきます(「抗体価が下がる」といいます)。1年に1回ワクチンを追加接種することにより、下がってきた抗体価を再び上昇させ、感染に対する免疫力を高めることができます。これをブースター効果と言います。 初年度のワクチネーション・プログラムの最後のワクチン接種(12~14週目)後1-2週間(免疫の効果が出始める)は、感染の危険性のあるような場所に連れ出したり、他の猫と接触させたりしないようにすることが大切です。

 

▽猫のワクチン接種は3年に1回でよい?

数年前から「猫のワクチン接種は3年に1回で充分」という噂?が広まっているのをご存知かもしれません。これは、アメリカの猫内科学会および米国猫臨床医協会が2000年に出した報告した推奨プログラムが元になっているのですが、実はアメリカと日本では状況が異なります。アメリカでは、日本で主流となっている3種・4種に加えて狂犬病ワクチンやクラミジア(これは最近日本でも発売されましたが)、FIP(猫伝染性腹膜炎)、FIV(猫エイズ)など、非常に多くのワクチンが出回っており、これら全てを毎年接種することは経済的にも猫自身の身体的にも非常に負担が大きくなる、との考えが根底にあります。従ってそれぞれのワクチンは3年に1回でも、結局ローテーションで毎年何らかのワクチンを接種していることになるのです。

 

日本で製造・販売されているワクチンは全て、「1年に1回の接種」で認可が下りています。従って、3年に1回の接種で万が一FVRやFCVに感染・発症したとしても、メーカーとしては何の保障もしてくれません。また殆どの場合、動物用の保険にも加入することができません。ペットホテルやペット同伴可の宿泊施設などでも、年に1回のワクチンを接種していない場合には宿泊を断られるのが普通です。
また日本では、アメリカに比べてワクチンの接種率そのものがまだまだ低いのが現状です。全国の猫の飼育頭数に対するワクチン接種率が低いと、免疫の保持率のばらつきが大きくなり、集団としての免疫保有率が低下してしまいます。現状でも「集団免疫」としての役割を十分果たすだけのワクチン接種率に達していない状態で、更にワクチン接種の機会を減らす方向性を日本で推奨することは、今の段階では危険性が高いのではないか、と考えられます。もちろん、ワクチン接種率そのものが高くなり、皆が確実に3年ごとにワクチンを接種する、と言う状況になれば、それが最も理想的な状況ではあります。将来的には、日本でも安心してこのような接種プログラムが可能になると良いと思います。

 

以上のようなリスクやデメリットを了承した上で、それでも3年に1回の接種にしたい、という方もいるかもしれません。もちろんこれらの混合ワクチンは、「犬の狂犬病ワクチン」のように法律で定められたものではありませんので、自己の責任に於いてよく考えながら判断されることをお勧めします。

 

▽ワクチン接種後の注意

猫の場合も、犬と同様にワクチンを接種した後にアレルギーなどの副作用を起こす可能性があります。注意点としては犬の場合と基本的に同様ですので、こちらを参考にしてください。

2017.11.01(水)

▽ワクチンの種類

現在、複数の製薬会社から様々な種類の混合ワクチンが市販されていますが、一体「何種混合ワクチン」を接種したらよいのか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか?ここではまず簡単にワクチンの種類について説明したいと思います。
まず、5種混合ワクチンを基本として考えて見ましょう。「5種」とは次の5種類のウイルス病を指します。

 

1.ジステンパーウイルス感染症
2.アデノウイルス I 型感染症(犬伝染性肝炎)
3.アデノウイルス II 型感染症
4.パラインフルエンザ感染症
5.パルボウイルス感染症

 

この中で、ジステンパーと伝染性肝炎、パルボウイルス感染症は特に重症度が高く、子犬では感染により死亡することも珍しくないため、「コアウイルス」として非常に重要になります。アデノにはI型とII型がありますが、実際には片方のワクチンで2種類の病気が予防できるので、通常はII型1種類が入っていますので、4種の成分で5種類の病気が予防できる、というのが5種混合ワクチンです。そして5種混合にコロナウイルスが追加されたものが6種混合ワクチンです。コロナウイルスは、単独感染ではそれ程重症にはなりませんが、パルボウイルスと重複感染すると、パルボによる致死率が上昇すると言われています。しかし、生後6週齢を過ぎた犬では殆ど感染せず、してもあまり大きな問題にはならないことが多いとも考えられています。

 

これら5種・6種のワクチンに「レプトスピラ感染症」のワクチンを追加したものが8種・9種・10種などの混合ワクチンです。レプトスピラ症には幾つかの種類(血清型)がありますが、どの血清型が何種類入っているかはワクチンメーカーにより異なっています。2017年12月現在、入手できるもっとも多価のワクチンは10種混合ワクチンで、これは6種のウイルス疾患と4種類の血清型のレプトスピラを予防できるワクチンです。

 

レプトスピラはウイルスではなく、スピロヘータ属というラセン菌の一種で、ネズミやモグラその他の野生動物から犬やヒトに感染します。人畜共通感染症のため、盲導犬や介助犬など一般のヒトと接触する機会の多いアシスタントドッグでは、9種以上の混合ワクチンの接種が推奨されます。また、猟犬や、頻繁に野外に連れ出す機会の多い犬では、レプトスピラを含んだワクチンを接種する必要性が高くなります。

 

当院ではこれまで㈱微生物化学研究所(京都微研)の5種および11種ワクチンを使用しておりましたが、同社が犬・猫のワクチン製造から撤退したため現在はZoetis社の6種および10種ワクチンを採用しております(今後も諸般の事情により変更される場合がありますのでご了承ください)。6種と10種どちらのワクチンを接種するかは、その子の年齢(月齢)や生活環境などにより異なります。詳しくは病院スタッフ、獣医師にご相談ください。

 

▽ワクチン接種の必要性

ワクチンを接種しても、病気を100%防げるわけではありません。 しかしながら、パルボやジステンパーなど、感染すると死に至るかもしれないような怖い病気に対して、ワクチンを接種して免疫を高めておくことは決して無意味なことではありません。 これらの病気は特に、子犬での致死率が高く、若い犬では接種の必要性が高くなります。また、ワクチンを接種していない母犬から生まれた子犬は、母乳からこれらの病気に対する「移行抗体」をもらうことが出来ないため、パルボやジステンパー、その他の感染症に罹る危険性が高くなります。

 

特定の地域や集団内でのワクチン接種率が高いと、病気に対する集団全体としての抵抗力が強くなり、たとえその集団内に「ワクチン未接種の子犬」などの「感受性の高い個体」がいたとしても、病気に感染する確立が低くなると言われています。これを「集団免疫」と言います。つまり、ワクチンを接種するということは自分自身の身を守るだけではなく、間接的に「抵抗力の弱い」身近な子犬達を病気から守ることにも繋がるのです。

このように、ワクチンは適切に接種することが大切です。

 

 

 

▽ワクチン接種プログラム

生まれたばかりの仔犬は、免疫系が未発達なので、自分で免疫抗体を作ることができません。抗体を作れるようになるまでは、母親の初乳に含まれていた移行抗体という免疫抗体によって様々な病気から守られています。この移行抗体は、生後約5週間目くらいから徐々に減少し始め、12~14週間目くらいでほぼ消滅します。

 

この時期、仔犬も徐々に自分で抗体を作れるようになって来ますが、移行抗体は減少するため感染を防御する能力も次第に弱くなってきます。従ってこの時期に最初のワクチンを接種する必要があるのですが(「ワクチンを打つ」ということは、「自分で抗体を作らせる」ということです)、ここで問題が一つあります。移行抗体が仔犬の体に残っていると、ワクチンを接種しても、きちんと抗体を作ることができません。ですから、この期間、病気から仔犬を守り、最終的に、ワクチンによってしっかりと抗体が作られるようにしなければなりません。そのためには、移行抗体が減少し始める5週目くらいから完全に無くなってしまう14週目までの間に数回に渡ってワクチンを接種するのが最も効果的です。

 

このようにして考えられたワクチンの打ち方(いつから、どのくらいの間隔で、何回打てばよいか)を、ワクチン接種プログラムといいます。ワクチン接種プログラムには、仔犬の生活環境やワクチンの種類などによりいくつかの方法がありますが、次のようなプログラムで接種します。

 

1. 生後2カ月目(約8~9週)と3カ月目(12~14週)にそれぞれ1回づつの計2回接種
2. 生後6週目と9週目、更に12~14週目に1回ずつの計3回接種

 

そして、次の年からは、1年に1回づつ接種するのが理想的です。 初年度のワクチネーション・プログラムにより得られた免疫は、約1年間効果が持続しますが、時間がたつと次第に効果が落ちてきます(抗体価が下がる)。1年に1回ワクチンを追加接種することにより、下がってきた抗体価を再び上昇させ、感染に対する免疫力を高めることができます。これをブースター効果と言います。
レプトスピラ感染症の発生地域付近に済んでいる場合や、夏休み・お正月などに「発生地域」に旅行・帰省するような場合には、出来れば半年に1回、レプトスピラのワクチンを接種することをお勧めします(レプトスピラ単独のワクチンは通常在庫していないこともありますので事前にご確認下さい)。

 

初年度のワクチネーション・プログラムの最後のワクチン接種(12~14週目)後1~2週間(免疫の効果が出始める)は、感染の危険性のあるような場所(屋外や犬の集まる所など)に連れ出したり、他の成犬と接触させたりしないようにすることが大切です。

 

▽ワクチン接種後の注意

ワクチン接種後に何らかの副反応が出る場合があります。ワクチン接種後の反応としては、注射した局部の腫れやしこりなどの他、顔が腫れたり、急に元気が無くなったり、虚脱してショック状態になることもあります。「アナフィラキシー」という非常に強いアレルギー反応を起こした場合には、非常に稀ではありますが、命に関わる危険性も出て来ます。今まで何でも無かったからこれからも大丈夫、と言い切れるものではありません。

 

急性の強いアレルギー反応は通常、接種後短時間(30分~数時間程度)で発生することが多いため、病院でワクチンを接種した後は、できれば1時間くらい病院内で様子を見てから帰宅されることをお勧めします。したがって、夕方接種して夜間に具合が悪くなるという状況を避けるため、可能な場合は出来るだけ午前中にワクチンを接種することをお勧めしています。また、ワクチンを接種した日はあまり興奮させたり、激しい運動をさせないように注意してください。万が一、様子がおかしい時はすぐに病院に連絡してください。

2017.11.01(水)

▽ フィラリアのライフサイクル

「フィラリア」とは犬や猫などの心臓(猫の場合は主に肺動脈)に寄生する、体長10~15cm程度の細長い形をした「寄生虫」の一種です。 フィラリアは、フィラリアの感染子虫を持った「蚊」に刺されることにより感染します。犬や猫の心臓に寄生したフィラリアの親虫は、「ミクロフィラリア」と呼ばれる小さな子虫(この子虫は顕微鏡でしか見ることができません)を産みます。ミクロフィラリアは血流に乗って全身の血液中に行き渡りますが、この血液を蚊が吸血することによりミクロフィラリアも一緒に蚊の体内に吸い込まれることになります。ミクロフィラリアは蚊の体内で成長し、やがて「感染子虫」と呼ばれる状態になります。そして蚊が再び吸血のために動物の皮膚に「針」を刺して穴を開けると、感染子虫は蚊の体内から脱出し、皮膚に開いた穴から動物の体内に侵入します。体内に侵入したミクロフィラリアは脱皮・成長を繰り返しながら、数ヶ月後には心臓に到達し、そこで再びミクロフィラリアを生むようになります。

 

▽フィラリア症の症状

フィラリア症の症状は主に、心臓に寄生した親虫により引き起こされます。寄生している虫の数により症状の重症度が多少変わりますが、多数の虫が寄生している場合には重度の心不全を引き起こし、様々な症状が見られるようになります。典型的な症状としては、
1)腹水が貯まってお腹が膨れる
2)呼吸が苦しく、咳が出る事もある
3)疲れやすい、散歩中などに倒れる
4)心臓発作、死亡
などを挙げることが出来ます。フィラリア虫体が肺動脈から右心室-右心房を乗り越えて後大静脈にまで到達した状態を「ベナケバ症候群」と呼びますが、この状態になると特に重い症状が見らるようになり、赤黒い尿が見られることもあります。

 

▽フィラリアの検査

フィラリア予防薬は原則的に、フィラリアの寄生が無い状態で投与するのが基本です(既に寄生している場合には、保存的治療と併用して予防薬を投与する場合もありますが、ある程度のリスクを伴う事になります)。通常は、毎年の予防を始める前に、フィラリアの検査を実施することが薦められます。フィラリアの検査には、ミクロフィラリアを検出する方法と、親虫の抗原を検出する方法があります。親虫が多数のミクロフィラリアを生んでいる場合には、血液をほんの1滴スライドグラスに垂らして顕微鏡で観察するだけで簡単にミクロフィラリアを確認する事ができます。しかし、親虫の寄生期間が短い場合や「雄」の親虫しか寄生していない場合、あるいは検査をせずにフィラリア予防薬を投与してしまった後などでは、たとえフィラリアが心臓に寄生していてもミクロフィラリアが検出できない場合があります。そこで、より確実にフィラリアの寄生を確認する方法として、血清学的にフィラリア虫体の抗原を検出する、と言う方法があります。

 

▽フィラリアの予防

フィラリアは、外科的に摘出したり、駆虫薬を投与して心臓に寄生している親虫を殺滅したりなどの「治療法」を選択する場合もありますが、いずれの場合も非常に高いリスクを伴う「治療」となります。「治療」行為により余計に状態が悪化したり、最悪のケースでは死亡してしまうような危険性も指摘されています。従って、フィラリアは「罹ってから治療する」のではなく、「罹らないように予防する」のが基本となります。通常1ヶ月に1回、予防薬を飲ませる事で、ほぼ確実にフィラリアを予防する事が出来ます。予防の期間は地域などにより多少異なりますが、当院では5月下旬から11月下旬まで、毎月予防することをお勧めしています。

 

 

2017.11.01(水)

新鮮外傷を、ドレッシング材を使用して湿潤環境で治療する「湿潤療法」は始まったばかりで、まだまだ一般 的には広まってはおらず、その方法も決まったものはありません。どのようなドレッシング材を使用したらよいのか、交換の頻度はどれくらいか、外科的処置が必要かどうか、一症例ごとに考え、臨機応変に対応して行く柔軟さが大切です。 湿潤療法をしていると、特に慣れないうちは、本当にこれでよいのだろうか?化膿しているんじゃないだろうか?などなど様々な疑問が浮かんできます。このような疑問を集め、出来るだけ解り易く回答してみました。

 

Q-1 ジュクジュクして「膿」の様にみえるのですが?

傷からは「滲出液」という体液が分泌されます。「滲出液」の中には組織の修復に重要な役割を果 たす様々な細胞成長因子やサイトカイン、マクロファージや好中球などの免疫細胞が含まれており、傷が治るのを助けています。これは「膿」とは全く異なるもので、傷の治癒には必要不可欠なものなのです。ハイドロコロイド材アルギン酸などの場合は、ドレッシング材の成分がゲル状に溶けて滲出液と交じり合い、「ドロッ」とした「膿」の様に見えることがあります。これらの「滲出液」はちょっと汗臭いような独特の臭気がしますが、「膿」のような腐敗臭がすることはありません。「滲出液」と「膿」とを間違えて、慌てて消毒したり抗生物質の無駄 使いをしないように注意してください。

 

Q-2 湿潤療法では二次感染は起きないのですか?

「感染」とは、組織1立方センチメートル中に細菌が10万個以上存在する状態、あるいは「壊死組織」や「血餅」「カサブタ」や「縫合糸」などの異物の存在により細菌が増殖した状態で、「発赤」「腫脹」「疼痛」「熱感」を伴うものを指します。これらの「異物」をきちんと取り除いた状態で湿潤環境を維持すれば、消毒剤の使用や乾燥により組織を痛めない限り「感染」が起こることは先ずありません。ただし、他の患者の「感染創」を処置したそのままの手で、他の患者の傷に触れると「感染」を起こす可能性がありますので、ディスポーザブルの手袋を使用して、患者ごとに交換するなどの注意が必要です。

 

Q-3 被覆材は何日くらい貼りっぱなしにしておいて良いのですか?

傷の状態、被覆材の種類などにより異なります。ハイドロサイトなどのポリウレタンフォーム・ドレッシング材では、滲出液が被覆材の全面 に染み出してきて変色してきたら交換時期であると言われています。滲出液が少ない場合は、多くの被覆材では最大1週間放置してよい、とされています。しかし、閉鎖療法に慣れないうちは、頻繁に交換して傷の治癒具合をチェックするのが良いと思われます。動物の場合は、ずれたり汚れたり、などの理由により、多くの場合中2日から3日程度で交換しています。

 

Q-4 手術後の傷は毎日「消毒」しなくていいのですか?

とにかく「傷」を消毒する、と言う行為自体が無意味(あるいは有害)ですから、必要ありません。手術創のような1次縫合の傷は、縫合後24時間から48時間で上皮化しますから、それ以後は、原則的には何の処置も必要ありません。ただし、動物の場合は自分で舐めたり齧ったりして縫合糸を外してしまったり、舐め壊してしまったりすることがありますから、「傷を保護する」と言う意味でガーゼなどを当てておくのが良いでしょう。私の場合には、術後1日から2日はフィルムドレッシングで被覆し、その後はガーゼを当てて包帯や腹帯を巻いておくか、エリザベスカラーをして傷には何も巻かないかのどちらかの方法を取っています。

当院での「術後縫合創の管理」はこちらを参考にして下さい。

 

Q-5 汚染した傷を「抗生物質を溶かした生理食塩水」で洗っていますが、効果 はあるのですか?

所謂「抗生生食」というものですが、抗生物質がその効果を発揮できるのは全身投与(内服あるいは注射)のときのみです。局所の使用では、抗生物質の有効濃度までその濃度が上昇しないので、ほとんど効果 はありません(これは軟膏剤でも同様です)。むしろ効果はないが、耐性菌だけは出来てしまうという最悪の結果 になります。効果があるとすれば、生食による「洗浄効果」ですが、これが何よりも重要です。洗浄に使用するのは何も「滅菌」された生理食塩水である必要はありません。水道水で充分です。

 

Q-6 キチン・キトサンを使う方法より閉鎖療法の方がよいのですか?

私がここで説明したいのは、「正しい創傷治療」の考え方です。傷を合理的に正しく、そして早く、かつ痛くない方法で治癒させる為には、創傷面 の湿潤環境を保つことが重要で、その為には創面を閉鎖するのが理に適っており、それには現在手に入れることの出来る「創傷被覆材」を利用するのが今のところ最も便利である、ということなのです。キチン・キトサンや各種の軟膏剤、ジェルなども、創傷面 に被せて使用するものは全て「ドレッシング材」に含まれます。キチン・キトサン製剤であれ、ティートリーオイルであれ、「がまの油」であれ、どのような物を使用したとしても、傷を乾燥させたりして治癒を妨げるような方法で使用すれば、傷は治りません(治ったとしても非常に時間がかかります)。つまり、例えどんなに高価な薬剤やドレッシング材を使ったとしても、「湿潤環境での創傷治癒」;モイストウンドヒーリングを基準として考えなければ、ほとんど意味がない行為になってしまうのです。

ちなみに、私は創傷に対して「キチン・キトサン」製剤は一切使用しません。このような物質は創傷に対して炎症などの刺激を引き起こすと考えられるため、傷の治癒が遅れます。また一時期流行した「ティートリーオイル」なども、アレルギーなどの副作用や細胞障害性などの報告があるため、使用しておりません。「基本を無視しても治る特効薬」は存在しないということです

 

Q-7 「滲出液」を採材して細菌培養検査に出したら「耐性菌」が検出されたのですが、抗生物質を投与しなくて良いのですか?

皮膚には常在菌がいます。皮膚が破けて傷が出来ると、常在菌は創傷面に移動しますが、これは「感染」とは言いません。このような状態で、抗生物質を使用すると、その抗生物質に感受性のある細菌は死滅してしまいますから、たまたま耐性を持っていた細菌だけが残り、繁殖することになります。ここで細菌培養検査をすれば、「耐性菌」が検出されるのは当然の結果 です。それがたとえMRSAであったとしても、抗生物質を投与する必要は全くありません。そもそも、「感染創」でない傷に対して「細菌培養検査」をする必要性がありません。

 

Q-8 傷に使用するガーゼなどは「滅菌」のものでなくてはならないのですか?

何度も繰り返しますが、皮膚には常在菌がいます。どんなに消毒しても、皮膚全体を「滅菌状態」にすることは不可能であり、殆どの場合、消毒した10分後には元の細菌叢に戻ってしまいます。「無菌」でないものを覆うのに「滅菌」のガーゼを使用する必要性は全くありません。明らかに汚れている場合や、特定の病原菌(それこそ炭疽菌とかパスツレラ菌とか・・・)が付着しているようなことが無ければ、感染を起こすことはまず考えられません。もっとも「ガーゼ」には傷を「湿潤環境」に保つ能力はありませんから、ガーゼを傷に直接あてるのは(縫合創などを物理的に保護する目的などの他は)止しましょう。

2017.11.01(水)


症例は11歳、柴系の日本犬。

「小脳腫瘍」と診断され、立って歩くことができません。
実はこの症例、原因不明(腫瘍と関連??)の血栓症で四肢の先端が壊死してしまい、その傷の治療のため、インターネットを通じて相談を受けていました。
途中から京都で開業されている西京極動物病院の山田先生を紹介して、そちらで治療を受けてもらっていました。

3ヶ月ほど経過し、趾端の壊死もだいぶ良くなったという報告を受けた直後、右の肩に褥創ができてしまったと言うことで、再びメールで相談を受けました。

写真のように右肩を着いて動き回るため、その部分の皮膚に「床ずれ」が出来てしまったのです。

 


右の肩に、比較的大きな穴が1箇所と、小さな穴が2箇所ほど開いています。それぞれの穴は、皮下で通じているとのことでした。

このような褥創は、このまま放っておくと3つの穴が繋がって、ひとつの大きな褥創になり、皮下の軟部組織も壊死して骨が露出するようになります。

すぐに低反発マットなどを使用して患部の除圧を徹底してもらうことと、水道水での洗浄、および穴あきポリ袋でのドレッシングを指示し、1日1回程度の交換をしてもらうようにしました。

 

その後、周囲の皮膚の汚れのために一見「悪化している」様にも見えますが、肉芽組織が増殖して皮下のポケットは消失しているようです。右の写真では、周囲の皮膚から上皮化が進んでいる様子(薄っすらと白い「薄皮」が貼ってきている)が判ると思います。このまま微温湯と穴あきポリ袋によるドレッシング、もしくは浸出液が少ない場合はラップによる被覆を指示しました。

 

微温湯による洗浄とラップでの被覆を続けて頂きました。右の写真は自宅治療開始から約1ヵ月半ほど経過したところです。かなり褥創が小さくなってきて、改善しているのが判ります。

 

約2ヶ月経過したところで、ほぼ完全に上皮化しました。

 

全経過を通じて、私自身はインターネットおよびメールでのアドバイスをしただけで、基本的に全て飼い主の方が自分で自宅治療を継続し、見事に褥創を治した例です。
飼い主の方は、当院のホームページ、および「新しい創傷治療のホームページ」を読んで「湿潤治療」や「褥創のラップ療法」の治療原理をとても良く理解して下さり、自宅で肌理の細かい管理・介護の結果、きれいに治癒しました。治癒まで約2ヶ月ほどかかっています。2ヶ月と言うと「長い」と感じるかもしれませんが、褥創というのはもともと非常に治り難い傷であり、「寝たきりである」という褥創の最も大きな原因を取り除くことが出来ないため、治癒までにとても長い時間がかかります。人間の褥創でも、数ヶ月~年単位で時間がかかる場合も稀ではありません。ですから、2ヶ月で治ったと言うのは、ある意味では「驚異的に早い治癒」と考えることもできます。

もちろん一度治った褥創でも、油断していると再発することも珍しくありません。一度出来た、ということは、その場所は「褥創の出来やすい場所」と言う事なので、常に良く観察して早めに異常を見つけることが大切です。また、除圧に気を配ることと、スキンケアも予防のために重要です。

メール相談による自宅治療で、しかも「小脳腫瘍」という重病を抱えた状態でも、きちんと管理すればこんなにきれいに褥創が治るのだ、ということを、同じような苦労をしている飼い主の方たちにも知って欲しい、ということで、全経過の写真を送ってくださいました。

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